ファンタジー好きの知り合いにおすすめされて、気になった本です。表紙絵は『宝石の国』の市川春子さん。
あらすじ
日本とユーラシア大陸の間に浮かぶ国、蕃東(ばんどん)。東アジア風の文化を持つそこは、さまざまな不思議な話に満ちていた。架空の国蕃東を舞台にした、アジア風ファンタジー。
読者に要求してくるものが多い本
世界観の作り込みがきっちりしており、好きな人はすごく好きだと思います。
しかし、今では使われない単語が頻出しており、読者に古典の知識を要求してくる本です。
学生時代古文の成績がそこそこよかった私ですら、えっちらおっちら読んでいたので、苦手な人は相当苦労すると思います。
ファンタジーらしい美しい情景、説話や昔話のような展開は、そういうものが好きな人にはたまらないと思います。
各話感想
雨竜見物
とある雨が続いた日、雨竜を見物しに行く話。
ちょっと珍しい花見のような感覚で竜を見物しに行くのが面白いですね。周囲の盛り上がりっぷりがまさに花見っぽいです。
霧と煙
遭難した船に乗り合わせた人々。彼らはなんとか助かろうとするが……。
オチが昔話っぽくて好きです。何も持たない人が、何かを持つ人になるところがいいですね。
海林にて
お酒を飲みがてら、不思議な話をする人々。彼らの話したこととは……。
嘘なのか、それとも本当にあったことなのか、あいまいなところが物語らしくていいですね。物語の中の物語です。
有明中将
美貌の男だった有明中将。彼を愛した二人の人間の話。
有明中将の話だと思っていたらそうではありませんでした。タイトルの人がさほど重要に扱われていないのが不思議な感じです。
気獣と宝玉
宇内という男は、なりゆきで蕃東に伝わる宝玉を探しに行かなくてはならなくなり……。
竹取物語を思わせる話でした。ヒロイン的存在、集流がいい根性してて笑いました。こういうキャラ好きです。
まとめ
私の好きなタイプの作品ではなかったけれど、クオリティは確かでした。好きな人は好きだと思います。
あらすじでぐっとくる人は読んでみてもいいのでは。