ブックワームのひとりごと

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しっかりした人物描写とストーリーを持つ百合小説―木ノ歌詠『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』感想

幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)

今日の更新は、木ノ歌詠『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』です。

あらすじをよく読まなかったので後から百合だということを知りました。

 

あらすじ

中学生の海幸は、列車に飛び込んで自殺しようとしたところ、電車が廃線になっていて不可能だった。そこでリガヤという少女に出会う。芸術家である彼女に半ば脅されるようにして、「幽霊列車」の作品を作るのに協力する海幸だったが……。

 

女の子同士がキスをしたり距離が近かったりする「百合」だけど、単純に「女の子同士がいちゃついている」だけに頼らないしっかりしたストーリーがあって面白かったです。

交流を通して少しずつ明かされていく、海幸とリガヤの過去。そしてそれを清算するためのラストシーン。その過程が非常に自然で、かつ読みごたえがありました。

一巻完結でありながら、きちんとキャラクターが掘り下げられているところも好きです。この短さで脇役含めて描写するのは並大抵のことではないと思います。

百合が嫌いでなければ一度読んでみてほしい作品です。

 

テーマとしてはかなりハードです。自殺や心中、毒親などなど、それに嫌悪感を覚える人もいるかもしれません。

終盤にかけてはぞっとするような描写も多く、はらはらしました。

ただその描写はストーリーに必要なものだし、軽々しく扱っている感じはしませんでした。

たとえば海幸の母親、チコは性倫理観のないめちゃくちゃなキャラクターなんですが、どこか幼児のようで憎めず、周りを引き付ける能力があります。そこが妙にリアルで、生々しいんですよね。

自分に不利益をもたらす親から離れられない子ども、という構図がポップさと現実感両方をもって描かれています。

もちろんフィクションなので嘘は多いんですが、不幸に酔いすぎずに嘘を使いこなしていると思います。

 

まとめ

すごく面白かったです。さすがに百合小説の名作と言われているだけあります。

 絶版本でプレミアがついてしまっているんですけれども、いつか電子化などの、救済があるといいですね。

これは多くの人に読まれてほしいです。

幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)

幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)