『雪の断章』を読みました。
いつかの『活字倶楽部』に載っていたんですがいつの号かは忘れました。ちょっとネタバレがあるので畳みます。
あらすじ
引き取られた先でいびられていた孤児の飛鳥。彼女は祐也という青年に助けられ、一緒に暮らすことになります。優しい大人に囲まれて、幸せに暮らしていたある日、殺人事件が起こります。殺されたのは、飛鳥をいびっていた家の娘。その事件は彼女の幸福に影を落としていき……。
ミステリーと文学のあいだ
ミステリー的な展開を扱っていますが、どちらかというと事件によって変化する登場人物の心の動きのほうがメインです。非常にジャンル分けがしにくいタイプの作品です。とりあえずミステリーということにしておきますが。
奥付を見ると、40年くらい前の本なんですが、文章に古びたところがなく、言われないと昭和の本だと気づかないくらいです。男尊女卑的な登場人物の物言いや、ちょっとした時代背景の部分でやっと気づくくらいでしょうか。途中まで本当に現代の話だと思ってました。
主人公がうじうじ悩んでいるので読むのに時間がかかるんですが、文章はとてもきれいで読んでてうっとりします。登場人物の心境の変化や、その行動に至るまでの心情がきっちり書かれていて、心理描写に無駄がないです。根強いファンがいるのも納得する物語ですね。
個人的に育ての親と血のつながらない子どもが恋するのってちょっと引いてしまうんですが(この子の父親になるという誓いはどうしたってなるから)そこまで至る話が丁寧だったのでもうしょうがないな……となってしまいました。もうこの二人はくっつくしかないんだよ。
まとめ
初めて読む感覚で楽しめました。こういう書き方もできるんだなあと新鮮です。
寒い日に読むと心に沁みそうな一冊です。