ブックワームのひとりごと

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出口のない世界で抗おうとする女の子 七木香枝『爪先に、結んだリボンをひっかける』感想

爪先に、結んだリボンをひっかける (花霞堂)

インディーズのものも大丈夫そうかなと思ったら紹介するけど「恥ずかしいから載せないで」というのがあればTwitterのDMからお知らせください。

KDP、要はkindle自費出版です。

 

あらすじ

大正時代に似て、そうでない世界。女学校にいた珠紀は友人と一緒にさる大きな家の女中になる。そこには次の春宮妃になる女の子がいた。目隠しで覆われたような閉鎖的な世界で珠紀は自我を保とうとするが……。

 

鬱屈した世界の甘さ

起こることすべてに説明をしてくれるタイプの作品ではなく、読者の想像にゆだねられている部分も多かったです。

でもそれが、作中の少女たちの境遇でもあります。世界の中心にいながら、世界のことはまったく説明されていない。目隠しをされて手を引かれ、わけもわからないうちに使い潰されていく……その「読者にとってのわからなさ」がキャラクターの境遇と地続きになっているところが好きです。

そしてどこまでも内向きな世界観は、危うい美しさがあってよかったです。どこにも行けないことはそれはそれで甘い境遇です。何も考えなくてもいいんですからね。

物語でしか味わえない、奇妙で耽美な世界が楽しめました。

 

甘えることを良しとしない女の子

しかしこの物語の主人公珠紀は、思考停止に甘えることをよしとせず、自分の心を守ろうと抗います。

その抗い方はどうにもつたなく、ささやかですが、彼女にとってそうすることが救いなんだろうなと感じました。

何も考えなければ幸せになれるのに、そうしない。それは何かを考えていれば自分でいられるからなのでしょう。

そんな主人公はかっこいいし、できるだけ長く抗ってほしいと思いました。世界観の上では、それも難しいかもしれませんが、それでも願わずにはいられません。

珠紀のような女の子がいることが、読むほうにとっても救いなのかもしれませんね。

 

まとめ

普通の商業作品にはないだろう作風で面白かったです。

やっぱりインディーズは、好きなものをてんこ盛りにしてこそ花ですよね!