今日の更新は、宮澤伊織『裏世界ピクニック4 裏世界夜行』です。
あらすじ・概要
謎の配信者の率いるカルトを退けた空魚・鳥子のふたり。ふたりはまた裏世界探索を始めた。今度の目標は、裏世界で夜を超すこと。その準備をしているうちに、彼女らは人の顔をした牛「くだん」と牛の顔をした女「牛女」に出会う。それは、どうやら空魚の過去に関連しているようだった。
同性同士だからできる愛情と友情の間
なんかすっごいラブラブになってた……怖……。
というのは冗談ですけど、今回は小桜の気持ちがよくわかる回でした。無自覚で面倒くさいバカップルは、裏世界に関わって迷惑をかけまくる。そんなふたりに善意でアドバイスしてくれる小桜お姉さんが優しすぎて涙が出てきます。
私はこういう常識人ポジションのキャラクター大好き。愛しいというだけではなく、いると物語が締まるんですよね。狂人だけでは気の休まるところがないですからね。
百合としての展開は「お前ら早よ付き合えや!!!!」と言いたくなるものでした。しかし読んでいて、同性同士だと恋愛と友情の境界線がかなりあいまいなことに気付かされました。友人に「好き」って普通に言うしスキンシップも取るし。これは同性じゃないと扱えないテーマですね。男女でやるとセクハラになってしまいます。
こうなってくるとどう一線を越えるのか楽しみになってきました。
◎ここからネタバレ◎
今回は連作短編の形をとった長編といった趣で、話ごとの関連性が高かったのが面白かったです。
特に「赤い人」の存在にはめちゃくちゃビビらされました。認知までいじられて、自分の人生すら操られていたかもしれないのは怖すぎます。
電子書籍でドアスコープのシーンを読んだんですけど、電子書籍であれを再現するの難しかっただろうな……。
そこから鳥子の存在を足掛かりに、何とか正気を保った空魚は熱かったです。あなたなしではいられない、になってきてますね。
それから繰り返しになりますが小桜は本当にいいやつですよね。大学を辞めようとする空魚をきっちり引き留めるのが最高に大人だと思います。どこか歪んだキャラクターばかりのこの世界で、小桜がふたりを心配する気持ちは本物なんでしょう。
汀のイラストが出たのも嬉しかったです。思った以上にやくざ者の風体でしたね。こんな格好で街を歩いて大丈夫なんでしょうか。
出版社の方がイラスト貼ってくれていたのでどうぞ。
12月19日発売『裏世界ピクニック4』の情報をほとんど出していませんが、今回も4話構成。冬はいろいろ人間関係が進む季節ですよね。
— 溝ロカ丸 (@marumizog) October 30, 2019
画像は〈一般財団法人 ダークサイエンス研究奨励協会〉事務局長・汀曜一郎さん。執事のように上品で、銃器と拷問に精通している良い人です。https://t.co/fhtcWd9c8C pic.twitter.com/F8wINXzCd3
個人的に好きなキャラだったのでイラスト化はとても嬉しいです。設定といい見た目といい一部の大人のお姉さんに人気がありそう。
空魚の過去をネタにした一冊ができたということは、鳥子編もあるのでしょうか。ちらほらほのめかされている鳥子の過去が詳しくわかるのは楽しみです。