ブックワームのひとりごと

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大人が子どもに癒されて終わるんじゃねえ―『くちびるに歌を』

くちびるに歌を

今日の更新は、『くちびるに歌を』です。

 

あらすじ・概要

五島列島の島の中学校に臨時の音楽教諭が赴任してくる。その柏木ユリは、元は有名なピアニストだった。合唱部の女子生徒たちは湧き立つが、彼女はピアノを弾くつもりはないと言う。さらに美人のユリ目当てに今までいなかった男子部員が増え、合唱部は混乱を始める。

 

前に進んでいるのヒロインだけじゃん!

いや大人が子どもに癒されて終わるな! もちろんちゃんと大人の役割を果たした上で紆余曲折あって癒されてくれるなら構わないです。しかし主人公がやったことって実質ピアノ弾いただけじゃん……。最初はろくに合唱部の面倒見ないし態度悪いのに、最終的にはいい先生みたいに終わるし。

自分で望んで得たわけではない苦難を前にして葛藤したり悩んだりする子どもたちを前にして、ヒロインがやることは、ふわっとした言葉をかけたり、ピアノを弾いたりするだけです。それで子どもたちが理不尽と戦う術を得たかというと、そうではない気がします。

その身に巣食う怒りや絶望に向き合うことをせず、声に出して吐き出すこともせず、ただ「前に進め」というメッセージを与えられる子どもたちがかわいそうでした。そんでヒロインはラストで癒され自分だけ前に進んでいるんですよね。ずるいですよ!

 

とはいえ映画としてはよくできていました。描写が説明的ではなく、自然にキャラクターの過去や性格が入ってきました。子役の子たちもかわいくて演技が上手かったです。

問題は、原作のせいか脚本のせいかわからないんですが、テーマだけですね。私にとっては駄作だけれど、この作品を高く評価する人の気持ちはわからなくはないです。ロマンだもんな、「子どもに癒される大人」。気立てのいい優しい子どもたちに癒されたいもんな。

でも私はそれをあからさまにやるのは悪趣味だと思います。

くちびるに歌を

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くちびるに歌を (小学館文庫)

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