ブックワームのひとりごと

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キャラクターに個性がないので疲れた―上田早夕里『華竜の宮 上』

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華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)

 

あらすじ・概要

海面が上昇し、平地が沈んでしまった未来の地球。外交官の青澄は、遺伝子改変によって海に適応した人類、海洋民との政治的な調整をしていた。彼は管理用のタグを持たない海洋民の長、ツキソメと出会い、海洋民と陸上民との利益ある共存のため上層部と駆け引きをする。

 

異文化がきちんと描けていない

うーん、面白い部分もあったんですが、それ以上に苦手な描写が多かったです。

 

苦手な部分の最たるものは、「メインキャラがエスパーじみた察しの良さを発揮するところ」です。いやいくら頭良くて空気が読めたところでいきなり他人の内心一気にわからないですよね? 推論や予測を立てるシーンがないから、なおさらエスパーに見えます。

たぶん著者は登場人物の頭の良さを表現したいのだろうと思うのですが、これでは逆効果ですよ。

その他にも「やたらと都合よく発揮されるチート能力」「まったく文化が違うのに簡単に意気投合してしまう」「自分と全く違う文化に対して、『これは幸せor幸せではない』とジャッジする登場人物」が苦手でした。

 

苦手な要素を総合すると、この作者、自分と全く違う文化のキャラクターを書くのが苦手なんだと思います。だから設定が上滑りして、中身が同じ着せ替え人形になってしまっています。

私は異文化にこだわりがあるので、この描写はつらかったです。

 

一応フォローも入れておくと、海面上昇で様変わりした世界を描く能力はすごいと思います。バイオパンクじみた魚舟と海洋民の関係は心躍りますし、人類の滅亡に抗うというテーマもいい。

ただキャラクターだけが面白くなくて読むのに疲れました。

下巻から面白くなるとは聞いたんですが、ここまで苦手な描写があると読むのがためらわれてしまいます。

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)