あらすじ・概要
36歳の漫画家・吉本浩二は連載していた漫画が終了し、無職状態になった。このままではいけないと、バイクで日本一周をすることに決めた。Eさんという憧れの女性と再会し、日本一周後にまた会うことを約束。Eさんにふさわしい男となるため、この度でたくましくなろうとバイクを走らせる。
女性のために日本一周をするだめ男
セール中に買いました。
日本一周というと聞こえはいいんですが、その内容はかなりグダグダで、成功談より失敗談のほうが印象的です。夜行フェリーで長話の人に捕まり寝かせてもらえなかった夜、実家に帰ったときの父親の不倫騒動など。
いわゆるとほほな自分を描いた、自虐旅日記です。
自虐ものは最近あまり興味がなくなってきたんですが、これは自分自身のいじり方が素直というか、失敗ばかりの自分自身を突き放して描いていて思ったより楽しめました。
漫画には「自分をよく見せよう」という下心がなく、それでいて「いい男になってEさんに再会したい」という目的があるので極端に道を外すことはありません。だから安心して読めました。
自虐的な話ではあるんですがところどころ素敵なシーンもあります。大学時代の友人との再会や、旅で出会った通りすがりの人との何気ないやりとり。それもわざとらしくなく、とほほなエピソードと同列に描かれているので押しつけがましさがありませんでした。
「女のために勝手に日本一周を決意するなんてひとりよがりだなあ」と思っていたので結末とあとがき代わりの対談は予想通りでした。でも単純なハッピーエンドではないからこそそれまでの旅も引き立ちます。
36歳に遅れてやってきた青春と、そこから卒業する話でした。
わくわくどきどきするような作品ではありませんでしたが、人生の箸休めといった感じで読んでいてすっきりしました。