あらすじ・概要
過去の通り魔事件を調べるため、奥飛騨の旅館に向かった皓と青児。燃えるような紅葉に囲まれた旅館で見たものは、前日亡くなった女将の亡骸だった。その旅館で、皓は行方知らずになってしまう。青児は皓の生存を信じ、彼の伝言に従ってある場所へ向かう。
全体的に収まりが悪かった
実質二本立ての謎解きに、凛堂棘(りんどう・おどろ)の兄、荊(いばら)の思惑が絡み合っている巻なわけですが、どの要素がメインか分からずちょっと混乱しました。
意味深で怪しげな荊の行動にはらはらするにも、謎解きの怪しげな雰囲気にはらはらするにも、どうにも収まりが悪くどっちつかずのまま終わってしまいました。
それでもつまらないわけではないですが、ここまでの2巻に比べれば劣る内容でした。
もうひとつの謎である「火間虫入道あるいはスネコスリ」も、犯人への因果応報がそれでいいのかって感じがします。正当な理由もなく動物を殺すことって結構罪が重いですからね……。
もちろんキャラクターごとに許す・許さないの価値観があるのはわかっているんですが、読者としてはちょっともやもやが残ります。
しかしいいところもありました。「牛鬼あるいは濡れ女」の怪しげな旅館で繰り広げられる血のつながらない母娘の愛憎はめちゃくちゃよかったです。これだけで一冊書けそうなネタを贅沢に使うのはすごいです。
棘のいけ好かないし善人でもないけれど結構有能なところ、そして肝心のところで勘違いをするところは探偵ものの主人公のライバルとしてふさわしすぎます。笑っちゃうけど。本当にハイスペックなのに憎めないキャラなんですよね。
不満もあるけどまあまあ楽しめる巻でした。