あらすじ・概要
双極性障害を患っている著者は、昔から「死にたい」という考えに取り憑かれていた。しかし、周囲の支えてくれた人たちのためには死にたくない。「死にたい」から「死なない」ために、己の中の希死念慮と語らい和解を試みる日々が始まった。文章と絵で語られるメンタルヘルス系エッセイ。
すっきり治りはしないけれど共存して生きていく
希死念慮がすっきり治りました! とか前向きになれました! とかではなく、著者が未だ迷いながらぐだぐだ考え込んでいる話ですが、これはこれで読者に誠実な内容だと思います。
ささいなことで「死にたい」と言うのは、周りに「考えすぎだよ」と言われがちですが、当人はその「考えすぎてしまう」ことがやめられないんですよね。
根暗な精神疾患の人間が「考えすぎるな」と言われても無理なので、考えすぎる自分とどう付き合っていくかというのがこの作品のテーマです。
著者が希死念慮と少し距離を置き、自分自身を客観的に見られるようになったきっかけは、他人に愚痴を言えるようになった、希死念慮はOKだけど実行することはNGにした、など小さなことです。
しかし少しずつでも自分の中の希死念慮を受け入れることで、それに飲まれないようコントロールできるようになっていきます。自分の心の中の闇とは、逃げれば逃げるほど巨大になっていくんだなあ……。
あと私も疲れてものを書けない日々が続くことがあるので、「体調に合わせて作るものを変える」という著者の行動はヒントになりました。無意識にやっているところはありますが、これからは体調が悪くてもできる作品を積極的に作っていきたいです。
本を読む限りでは著者はまだまだ健康とは言いがたいですし、これからも苦労をするのだとは思いますが、それでも前に進もうとする希望のある作品でした。
著者の境遇が特殊なので万人には通用しないでしょうが、うつっぽくなりやすい人には参考になるのではないでしょうか。