あらすじ・概要
企業がAI技術の実証実験をしている小さな町。その街の高校にシオンという転校生がやってきた。変わり者の彼女は、実はAIで……。母親の作ったAIであるシオンの実験を無事に終わらせてあげたいと思ったサトミは、友人たちを巻き込んでシオンの秘密を守ろうとする。
倫理はないけどクオリティの高い作品
想像していたより倫理のない話でした。主人公たちが平然と犯罪行為を犯し、なおかつ(罰されない理由付けはされているものの)あまりそれにお咎めがありません。
悪役である支社長は、正直「性格が悪い」以外の悪いことをしていないのでかわいそうでした。そりゃ上司としてなら当然の行動でしょう。
それなりに責任のある身分の人が見ると胃が痛くなりそうです。
しかしそれでも結構楽しめる作品でした。だってこれ、「青春のエモさに比べれば犯罪行為なんて些事」みたいな作品ですし。夜中に学校のプールに忍び込む描写に「不法侵入じゃん!」と言うと終わりなのと一緒。
青春をベースにした一貫したアナーキーさ、反社会性は悪くなかったです。
「AIが発達した田舎町」という世界観も面白くて、田園風景に立つ風車やソーラーパネル、ロボットが当たり前にうろうろする学校など、「今に近い社会なのに、どこか違う」という表現が上手いです。特に風車とかソーラーパネルって景観を損なうとされがちなのに、この作品ではかっこよく描かれているのは新鮮です。
スピーカーや照明を使い、ミュージカルをSF世界観で成り立たせる表現も楽しかったです。
ストーリー自体も伏線の回収がきれいで面白いです。序盤に出た何気ないアイテムや発言が後半からどんどん回収される気持ちよさ。特に一番大きなネタばらしはよかったです。ちょっとホラーじみているところも含めて。
正直この作品の倫理観、AI観はあまり私と一致しないけれど、それでも映像もストーリーもクオリティが高く高評価されるだけある映画だと思います。面白かった。