ブックワームのひとりごと

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音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』 雨下の章 感想

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あらすじ・概要

不死の力を持ってしまった吸血種のリリーは、死ぬ方法を求めて世界をさまよう。リリーが出会ったのは、おかしな人間や吸血種たち。橋を作る男、大人気のヴァンパイアハンター、老女の姿をした少女など。リリーは彼らを見守り、やがて別れの日が来る。

 

リリーは本当に優しいなあ

実は雨下の章のほうは見てなかったんですよね。これが初見です。日和の章の感想はこちら。

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

TRUMPシリーズの不死者の中ではリリーはめちゃくちゃ優しいです。感性が真っ当。

出会った人に心を傾けて、真面目に悲しんだり喜んだりして、そこは見ていてほっとします。

 

個人的に好きなのは「求めよ捧げよ待っていろ」と「少女を映す鏡」です。

「求めよ捧げよ待っていろ」はトンチキエピソードなんですけど、その倫理のなさに笑ってしまいます。リリーもノリノリでさらに笑う。

こういうぶっとんだ脚本挟んでも「繭期だから」で済ませられてしまうTRUMPシリーズは強いですよね……。いやメインの登場人物は人間なんだけど。語り手のリリーが繭期だから。

 

「少女を映す鏡」は普通の吸血種の5倍の速さで年老いてしまう少女が、鏡の中にリリーを閉じ込め「自分」として扱う話。

不老不死という設定を「鏡に閉じ込める」という題材に利用するのが頭いいです。そのアプローチは初めて見ました。

自分に好意を向けられて、鏡の中のリリーを「私じゃない」という少女アイラの悲痛な叫びが印象的でした。

 

日和の章を見たときも思いましたが、TRUMPシリーズの「鬱」「救いがない」という作風から少しずらして、新しい吸血種の可能性を見せてくれたのが面白かったです。