ブックワームのひとりごと

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「かわいそうな」加害者家族だけが助ける価値があるのではない―阿部恭子『加害者家族を支援する 支援の網の目からこぼれる人々』

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加害者家族を支援する 支援の網の目からこぼれる人々 (岩波ブックレット)

あらすじ・概要

ある日突然家族が犯罪者になってしまったら――。加害者家族の支援活動をしてきた著者が、家族の犯罪に困惑し、傷つき、葛藤する彼らの姿を語る。排除され孤立する加害者家族のために社会は何ができるのか、そして、新たな犯罪を防ぐために支援者として何ができるのか……。

 

殺人罪以外の加害者家族の悩みもある

加害者家族の話は結構気になっていて、本を読んだりネットで調べたりしていますが、この本が一番よくまとまっていてわかりやすかったです。

著者が実際に加害者家族の支援を行っているのもあり、語られる例が具体的で参考になりました。殺人の場合、交通事故の場合、性犯罪の場合、軽犯罪を繰り返す場合など、バリエーションも多岐に渡り、犯罪の内容によってそれぞれ違った悩みがあるのだと感じさせられました。

加害者家族というと殺人罪の場合がよく語られがちですが、性犯罪の加害者家族が「お父さんはそんなに悪いことをしていない」とかばう母親にショックを受けたり、軽度な窃盗を繰り返す娘と共依存に陥っていることに気づいたり、犯罪の内容によって加害者家族が直面する問題も変わってきます。

 

また著者は、加害者家族に関心が集まり始めたこと自体は肯定的に捉えつつも、「責任のない『かわいそうな』加害者家族」しか困っている人と認めない状況には警鐘を鳴らしています。

実際のところ、犯罪を犯した息子を虐待していた親、軽犯罪を繰り返す娘と共依存に陥ってしまった親、などなど「犯罪に無関係で、完全に責任がない」とは言えない加害者家族もいます。加害者家族にも間違いを間違いとして認めてもらった上で、「これからどうするか」「家族のさらなる犯罪を防ぐためにできることは何か」支援していくことが大事なのだなと感じました。

 

弟が犯罪者になってしまった人のコミックエッセイを紹介したので、ついでに貼っておきます。

honkuimusi.hatenablog.com