あらすじ・概要
自分の失敗で異動させられることになった公務員、緒方太一は、「くらし文化特殊支援室」という謎の部署にやってきた。そこは警察では扱えない、怪異事件を解決する部署だった。主任分析官の真坂野ゆりとともに、太一は狐の面をかぶった謎の人物を追うことになる。
主人公が善人とは言いがたいのに面白い
主人公は一見明るい好青年だが根は憶病で都合のいい性格で、善人とは言いがたいです。そんな問題のあるキャラクターでありながら、面白く読ませるところが新鮮でした。
むしろ探偵役にしてヒロイン、真坂野ゆりのほうが倫理観はまともだったのでありがちな「モラルのない探偵とモラルのある助手」の構図でなかったところが新鮮でした。
主人公の問題行動にはちゃんと作中でお叱りやツッコミがあるので、だめなキャラでもストレスが少ないです。
内容としては民俗学や呪いの知識で謎を解いていくホラーミステリ。民俗学知識とともに、神奈川・川崎市のローカルネタがふんだんに混ぜ込まれていて、ローカルネタ大好きな身としては楽しかったです。
川崎に元々ある伝説や、関東を襲った大空襲なども絡められ、舞台が川崎でなければならない理由がはっきりあるところがよかったです。
謎解きも表面的な内容ではなく、風俗や因習を深く描写していて、生々しくて面白かったです。「ありそう」と思わせる凄みがあるんですよね。
こういう電子限定レーベルで続きが出るのあまり見たことがないんですが、まだ続けられそうな感じだし続きがあったら読んでみたいですね。