あらすじ・概要
いわれのないトレパク疑惑に巻き込まれ、誹謗中傷に疲弊してしまったイラストレーターの咲良。そんな中、祖母のけがで祖母の所有する山の見回りを頼まれる。そこで出会ったのはひとりの青年だった。どうやら彼の本性は狐で、咲良は彼とかつて結婚の約束をしたという。
「愛してるとか言ってるけどそれセクハラじゃない?」みたいなところがない
わかりやすく言ってしまえば「傷ついた女性が自分を溺愛してくれる男性に癒される話」ではあるんですが、キャラクターたちの行動の動機がしっかりしており、多少ご都合主義でも気になりません。
狐の青年が咲良に尽くすのは、かつて咲良と出会ったことで自分の行動を変えられたこと、そして咲良自身にプロポーズされたことがきっかけで、好きになってしまうのも納得がいきます。
また、咲良も彼に口説かれてまんざらでもないことが早い段階でわかるので、ぐいぐい来られてもあまり怖さがないんですよね。紳士的な描写が多いのもありますけど。
「愛情を言い訳にしているけどそれってセクハラじゃない!?」という描写がほぼないところが癒されました。
作品の終盤で、咲良は悪役キャラのことを許してしまうのだけれど、そこはひどい目に遭わされてもそれでいいのかという気持ちはありました。
ただやられたらやり返すのではなく、自分の弱さ、至らなさを引き受けることこそが罰というのがこの作品の価値観なのかなと思います。
確かにこの作品に勧善懲悪的な終わり方は似合わなかっただろうし、これはこれでよかったのかもしれません。