あらすじ・概要
巷にあふれる障害者をめぐる「感動」ストーリー。しかしそれは当事者の思いや多様性を反映しているとは言えないのではないか。様々な作品を取り上げつつ、フィクションやドキュメンタリーの中の障害者の表象を考えていくブックレット。
排除ではなく、広く議論されることを望む
まず著者が「感動ポルノ」の排除ありきで考えていないことにほっとしました。私自身は「感動ポルノ」は嫌いですが、表現規制には否定的な立場を取っています。
安易な「感動」にはつばを吐きたくなりますが、じゃあどこまでが「感動ポルノ」なのか定義しようとするときりがなくなります。
著者は過去に作られた障害者をテーマにしたフィクションやドキュメンタリーを題材に、障害者の表象について語っていきます。
その中でマジョリティが「障害のある人はこうあってほしい」と無意識に押し付けている願望には、嫌な気持ちになります。
とはいえそういう作品をなくすのではなく、反面教師として批評し、どういう表現が当事者の利益になるのか議論するのが大事だと思います。
作品に対する著者の意見には同意するところもありますし、できないところもあります。しかし明確な答えを得るよりも、障害者の表現が広くいろいろな人に議論されるのが大事だと思っています。