あらすじ・概要
製紙会社の三代目として生まれ、社長として大王製紙に君臨してきた井川意高。彼はカジノに狂い、子会社のお金に手を付けて何十億円も浪費してきた。著者自身が自分の生い立ち、社長時代のこと、お金を使わせるカジノの巧妙な罠を振り返る。東大卒の男はなぜ狂ったのか……。
自分の異常さをわかっているだろうに、自分をよく見せることがやめられない人
田中紀子『ギャンブル依存症』の中で紹介されていたので読んでみた本です。
懺悔録といいつつ「社長時代自分はどんな活躍をしたか」だの「交友関係がいかに派手だったか」だの、自分のいいところをことさらに見せつけようとしてくる本なので、あまり反省を感じません。
第一著者がいい社長だったか決めるのは従業員や顧客や株主なのだから、今となっては著者自身が自分をどう評価しているかなどどうでもいいことでしょう。従業員が犯罪を犯したリーダーをよく評価するのは変な話ですしね。
それに著者は「友人に恵まれた」と言っていますが、文中でアルコール依存症と診断されており、依存症と診断されるレベルまで飲んでいるのを止めない友人というのは本当にいい友人なのか疑問に思います。私の友人がうっかり酔いつぶれたときはもうひとりの友人に怒られてましたよ。
著者のような人間に印税を払うのは正直癪ではあるのですが、同時にこの本には得られるものがあります。それは東大に入ろうと、社長として活躍しようと、人は狂うときは狂うということです。
何億ものお金をカジノにつぎ込んでおいて、自分の異常さを理屈ではわかっているだろうに、今さら「まとも」で「強い男」で「権力者」の自分を演じようとしてしまいます。その滑稽さには浅ましさと同時に同情します。
読んでいて気持ちのいい本ではなかったですが、反面教師としてはいい本だったと思います。