ブックワームのひとりごと

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自称HSPの人を狙うエセ科学や詐欺、カルト団体に警鐘を鳴らす―飯村周平『HSPブームの功罪を問う』

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HSPブームの功罪を問う (岩波ブックレット)

 

あらすじ・概要

一般的な人よりも敏感な人たちを指す、「High Sensitive Person」略してHSP。HSPという言葉で救われた人もいる一方で、発達障害の人への蔑視や、HSPを巡る怪しげなビジネスなど、よくない傾向も見られる。日本におけるHSP研究者である著者が、HSPの今と問題点を解説する。

 

HSPブームに便乗するビジネスにご用心

同じ著者の本『HSPの心理学 科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」』と内容がかぶるところがあるので、どちらを買おうか迷っている人は『HSPの心理学』を買った方がいいと思います。こちらの方が情報量が多いです。

honkuimusi.hatenablog.com

 

『HSPの心理学』との違いは、氾濫するHSPビジネスへの警鐘が主なテーマになっているからでしょう。エセ科学、怪しげなカウンセリング、カルト団体など、HSPを名乗る人を狙うビジネスは多いです。

「精神疾患について検索しているとよく広告で出てくるあの病院だろうなあ」とか、「毒にも薬にもならないアドバイスをするあのアカウントのことだろうなあ」と思い当たるところがたくさんあります。

正直精神疾患当事者といえど素人で、そういう怪しげなビジネスを論理的に批判しようとしても限界があります。こうしてプロの人がきちんと批判してくれるのはありがたいことです。

 

私も精神疾患当事者で、他の精神疾患の人とも関わるゆえにHSPを名乗る人は身の回りに結構います。けれどそれに苦々しさも感じていたのは事実です。「繊細である・繊細でない」人はもちろんいるでしょう。しかし何でもかんでも「繊細さ」に紐づけて考えるのは、陰謀論やオカルトと変わりません。

自分や他人をラベリングする安楽さに負けて、本当に解決すべき問題を忘れていないか。これはHSPに限らず、いろいろな「属性」に言えることではないかと思います。