あらすじ・概要
障害者施設で19人が殺害された相模原障害者施設殺傷事件。その事件は多くの障害者とその家族、支援者らに衝撃を与えた。著者は障害のある人の意見を聞いたり、過去の優生思想が起こした事件を語ったりして、優生思想の罠に囚われないよう警鐘を鳴らす。
尊厳を信じない人に尊厳をどう説明すればいいのか
話が色々なところに飛ぶので一冊の本としてはまとまりがないのですが、それでもいろいろ考えさせられるところのある本でした。
相模原事件の容疑者の書いた文章から、被害者の家族の思い、障害を持って暮らす人々の反応、そして過去の優生思想が起こした事件について書かれています。
後半はナチスが起こした障害者を抹殺する計画について書かれています。短いダイジェストの内容ながら恐ろしい情報でした。
ユダヤ人を殲滅する計画の「練習」として障害者の大量殺害が計画されたこと、そしてその計画に嫌々ではなく積極的に参加していた医者がいたこと、計画が中止になったあとも医療従事者が個人で障害者を「処分」していたこと。
人は明らかに間違った倫理の中にいても、それが当たり前になると順応してしまうのかもしれません。読んでいてひどく嫌な気持ちになりました。
しかし、どっちつかずの人はまだしも、最初から人の尊厳を認めていない人に尊厳の話をするにはどうすればいいのだろうと思います。世論が引きずられないように語り続けるのは大事でしょう。しかし他人の尊厳というものがわからない人をどうすればいいのでしょう。
結論が出ないまま読み終えてしまいましたが、そういう問題がここにあることを話すこと自体が世の中をマシにしてくれると信じたいです。