あらすじ・概要
漫画家の著者にはひとり暮らしの父がいた。仕事を続けまめに掃除をし、生活を続けていた。しかしあるときから認知症の兆候が見え始め、施設に入れることを考え始める。施設探しの日々、ままならない父親の行動を描きながら、子どもが老いた親を世話することを考える。
子どもになった親をどう助けるか
この本では認知症になった親を子どもの姿で表現しています。著者の父は中学生、著者の夫の父は小学生、著者の夫の母は高校生。
今の親たちとは違う姿ではありますが、細川貂々夫妻が「これから世話をしていかなければならない、弱くなった姿」としてはわかりやすいと思います。
著者の父は、娘である著者から何度も「将来のことを考えてほしい」と手紙を受け取りますが、自分が動けなくなった時の対策を取らないまま認知症になってしまいます。
著者が思うようにならない父にいらだちますが、自分が認知症になったあとのことは想像しにくいものなのでしょう。
同時に著者の夫、「ツレ」の介護問題も描かれます。認知症になり始めた父を施設に入れたのはいいものの、伴侶と一緒に暮らせなくなった母も様子がおかしくなります。最善の方法というのは人によって違うのだなあと思いました。
あとがきで、著者が「父をかわいいと思うようになった」と記していたのが印象的でした。自分を育ててくれ、それでもわだかまりを感じる相手を、「かわいい」と思えるようになるのはうらやましいです。私もその境地に達してみたいですね。