あらすじ・概要
日本人に怖れられ、またユーモラスに描かれてきた「鬼」。その存在はどうやって確立し、文化の中でどう扱われてきたのか。中国から入ってきた鬼の概念から、節分の成立、鬼とマイノリティの関係など、鬼と日本人の歴史について語る本。
女性に押し付けられた「鬼」の概念
若者向け新書レーベルでありながら、鬼と差別の関係について突っ込んだ話をしていて好感を持ちました。そのあたりをあやふやにして書く学者も多いですからね。
怪異や妖怪、人ならざるものの表現は、その当時マイノリティだったり、抑圧されていたりする属性と深く結びついています。
障害を持つ子どもが鬼子とされ、凶兆として恐れられ、親に捨てられる。また、嫉妬に狂った女性が鬼と化す物語を、エンタメとして受け止める。
女性が特別悪い存在だとは思いませんが、立場の弱い存在がネガティブな感情にとらわれるのは、それはそうだと思います。でもそういう悲劇がエンタメとして受け入れられたのは、女性の悲しみに少しは共感してくれる人がいたからかもしれません。
この間『坊主DAYS』を読んでいたら「仏教は男女平等」という話をしていて、首をかしげていたのですが、この本では「仏教は女性差別的」とはっきり述べていてそれはそうですよね……と少しすっきりしました。仏教だけが女性差別をやっていたわけではないですが、「自分の宗教はやっていない」と言い出すのはずるいです。
人が信仰を持つこと、不思議なものの存在を語ることと、差別の問題は関係があります。それをきちんと話してくれる本だからこそよかったです。