ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

歴史

『砂糖の世界史』川北稔 岩波ジュニア新書 感想

あらすじ・概要 お菓子にやコーヒー、紅茶に甘味を加えるために使われている砂糖。その歴史は、植民地支配と深く関わっていた。砂糖をめぐる欧州の国々と植民地の関係、そして、コーヒー、紅茶、チョコレートという他の商品作物との関係を説明する。 砂糖が…

『神戸 難民日誌』津村喬 岩波ブックレット 感想

あらすじ・概要 神戸の埋め立て地、ポートアイランドに暮らしていた著者は、阪神大震災を経験する。当時の神戸の雰囲気、人々の姿を文筆家の立場から語る。被災者から見た、震災後の神戸の希望とは。 良くも悪くも当時の文章、とある文筆家の日記 良いところ…

『まんが版 大阪市の歴史』さいわい徹 和泉書院

あらすじ・概要 日本第二の都市として栄えてきた大阪、古代、難波宮の時代から、武士の時代、商人の時代、そして明治維新後、戦後まで、その権力の興亡と文化をたどる。大阪の歴史を語る学習漫画。 大阪における権力の興亡 最近大阪の歴史について学ぶことが…

『関東大震災と流言 水島爾保布 発禁版体験記を読む』前田恭二 編著 岩波ブックレット 感想

あらすじ・概要 関東大震災で大きな被害を受けた東京。画家,文筆家であった水島爾保布は地震発生直後から、デマや流言に惑わされる人々の姿を書き残していた。災害による混乱、恐怖。そして朝鮮人や、朝鮮人に間違われた人たちの虐殺が発生する。関東大震災…

『古文書返却の旅―戦後史学史の一齣』網野善彦 中公新書 感想

あらすじ・概要 日本史を研究していた著者は、各地方から借用した古文書が借りたまま返せていないことから、古文書返却の旅に出る。著者は各地を回り、不義理を謝罪しながら、学者の地元民への軽視を考える。日本史研究の負の側面を伝える新書。 研究者の後…

『トルコ 建国一〇〇年の自画像』内藤正典 岩波新書 

あらすじ・概要 イスラーム国唯一の世俗主義を掲げ、今日まで存在してきたトルコ。その内側には、宗教と政権の対立、クルド人をはじめとする国内のマイノリティへの苦悩が渦巻いていた。国内外の困難と、それに立ち向かおうとするトルコの人々。ニュースでは…

『聖徳太子』池田理代子 フェアベル

あらすじ・概要 古代の日本では、日本古来の神々を信仰する人々と、仏教を国を礎としようとする人の権力争いがあった。幼い頃から不思議な力があった厩戸皇子は、仏教を元にした国を作り、人々を助けることが自分の使命だと思うようになる。摂政となった厩戸…

『映像記録 関東大震災 帝都壊滅の三日間』NHKスペシャル 感想

あらすじ・概要 首都東京を壊滅させた関東大震災から100年。NHKは当時の映像を鮮明化、カラー化し、関東大震災発生から三日間のできごとに迫る。地震、火災、群衆事故、そして流言や虐殺。地震学者の意見も交えながら、震災の教訓を学ぶドキュメンタリー。 …

家庭教師のトライの日本史B動画を完走したメモ

家庭教師のトライの日本史B動画を完走しました。 リンクはこちら↓ 高校 日本史 映像授業 Try IT(トライイット) - YouTube タダで見ていいのか?と思うクオリティでした。 私は高校では世界史選択で、日本史に関してはおおざっぱな知識しかありません。 今…

『春日局』池田理代子 フェアベル

あらすじ・概要 戦国時代に生まれた少女、福は、父親が明智光秀に与したことから逃亡生活になる。結婚して子どもをもうけたものの、将来への不安から徳川家康の孫の乳母となる。福はやがて、その孫である竹千代が将軍になるためにすべてを懸けるようになる。…

【フランス国民を魅了した英雄の栄光と挫折】池田理代子『皇帝ナポレオン』感想

あらすじ・概要 革命後のフランス。王政を倒したのはいいものの、権力を狙う人々の思惑が錯綜し、政治は混乱していた。そんな中、軍人ナポレオンが現れる。彼は圧倒的なカリスマ性と、指揮の才能によって、権力の階段を駆け上がる。 人々を魅了した天才の転…

【冴えない江戸時代武士の賭博・浮気・暴力】横山光輝・神坂次郎『元禄御畳奉行の日記』感想

あらすじ・概要 尾張藩士の朝日文左衛門は、武士として重大な仕事があるわけでもなく、賭博、女遊び、深酒などをして暮らしていた。浮気のせいで妻に嫉妬されて家に帰りたくなくなったり、日々のゴシップニュースを書き留めたり。時代劇では描かれない、「か…

わりとしっちゃかめっちゃかな日本神道と仏教―義江彰夫『神仏習合』

あらすじ・概要 日本において、神道と仏教は混じり合っていった。これを神仏習合と言う。時の権力者において、神道と仏教はどういうもので、いかにして神と仏は同一視されるようになったのか。朝廷や貴族社会、武士の社会と権力の移り変わりとともに、日本人…

鬼の歴史と女性やマイノリティと鬼との関係―小山聡子『鬼と日本人の歴史』

あらすじ・概要 日本人に怖れられ、またユーモラスに描かれてきた「鬼」。その存在はどうやって確立し、文化の中でどう扱われてきたのか。中国から入ってきた鬼の概念から、節分の成立、鬼とマイノリティの関係など、鬼と日本人の歴史について語る本。 女性…

科学者だって間違うしその場の雰囲気に流される―藤野豊『強制不妊と優生保護法 "公益"に奪われたいのち』

あらすじ・概要 障害者やハンセン病の人々に不妊手術を施した悪法、優生保護法。その法律はどのように作られ、どのような歴史をたどったのか。優生保護法の現在までを振り返りながら、優生主義の恐ろしさ、愚かさを伝える本。 科学者だって過ちを犯す 薄い本…

清少納言から中宮定子への熱烈な主従愛―冲方丁『はなとゆめ』

あらすじ・概要 宮中に出仕することになった清少納言は、そこで中宮定子の聡明さ、優雅さに惹かれる。中宮定子や貴人たちとの交流に、頭のいい清少納言は機転を利かせて雅に答え、それを評価される。しかし次第に、藤原道長の権力が、中宮定子にまつわる人々…

採集や狩猟をして暮らし、のちに迫害された北海道の先住民たち―時空旅人編集部『今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人の歴史と文化』

あらすじ・概要 かつて東北から北海道、樺太や千島列島にかけて暮らしていた民族、アイヌ。北の大地で、狩猟と採集の生活をしていた人々とは……。その宗教観や、食べ物や着るものなどの文化、そして日本との歴史を一冊にまとめた本。 日本に似ているようでが…

九州の炭鉱で働いていた人々が語る、生き延びるための物語―上野英信『地の底の笑い話』

あらすじ・概要 九州の炭鉱では、今では考えられないほど過酷な労働が行われ、多くの男女がそれに従事していた。仕事の合間に語られるのは、幽霊の話、怠け者の話、ケツワリ(脱走)の話。労働者がろくに守られなかった時代、使用者に支配される中で、生き延…

ケルト時代から多文化移民社会までイギリス史をダイジェストで知る―近藤和彦『イギリス史10講』

あらすじ・概要 ユーラシア大陸の西の果て、島国として存在するイギリス。ブリテン島で暮らしていたケルト人の時代から、ノルマンコンクエストの時代、イングランド・スコットランドの確執、そして産業革命……。と、イギリスの歴史を10に分けダイジェストで…

戦時下のアイドルの、キラキラした世界の裏にあった罪悪感―『特集ドラマ「アイドル」』

www6.nhk.or.jp あらすじ・概要 田舎から東京に出て、劇場、ムーランルージュのオーディションを受けたとし子。そこで下働きとして働くが、ある日劇場のスターの代役として舞台に立つこととなる。とし子はそこで明日待子と名前を改め、「アイドール」として…

「映え」を意識しすぎて思想的にはガバガバ―『長崎の新聞配達』

longride.jp あらすじ・概要 戦後の日本・長崎にやってきて、とある被爆した郵便局員谷口と出会い、その経験を本にしたためたピーター・タウンゼント。タウンゼントの娘イザベル・タウンゼントは、谷口の死後長崎を訪れ、父親が記録した谷口の被爆体験をなぞ…

三国志のオタクが推しのために中国に渡り名所めぐり―杜康潤『杜康潤のトコトコ三国志紀行』

あらすじ・概要 三国志が大好きで、三国志のことを調べるために中国へ留学までした漫画家、杜康潤。著者が中国旅行で巡った三国志ゆかりの土地や、三国志についてのテーマパークの内容を、コミックエッセイ形式で語る。巨大な中国では移動するだけで一苦労で…

江戸時代の豪商や百姓が残した遺言から人生を見る―夏目琢史『江戸の終活 遺言から見る庶民の日本史』

あらすじ・概要 戦国時代が終わり、長い平和が続いた江戸時代。そのころ、庶民はどう社会を見ていたのか。江戸時代の豪商や百姓の遺言を読み、当時の生活や社会の価値観について迫る。老境を迎え、自分の人生を振り返る江戸時代の人々の哀しくもいとおしい姿…

エジソンとテスラが電気の覇権を巡って対立―『エジソンズ・ゲーム』

あらすじ・概要 発明王・エジソンに雇用されたテスラは、「給料を上げてやる」という言葉でエジソンの無茶振りに応えたが、給料は上がらなかった。テスラは実業家ウェスティングハウスと組み、「交流方式」の電力の普及を目指す。しかしエジソンは「直流方式…

ファミリーレストランの歴史から見る日本の家族と外食の関係―今柊二『ファミリーレストラン 「外食」の近現代史』

あらすじ・概要 日本各地にあるファミリーレストラン。それらはどこから来たのか。明治初期のデパートの食堂から始まって、郊外の路面店やショッピングモールに入るまで、ファミリーレストランの歴史を追っていく。そこには、日本における家族と外食の関係が…

生きるために化石を発掘していたら古生物学に貢献していた―北神諒『コミック版世界の伝記 メアリー・アニング』

あらすじ・概要 海辺の町で育ったメアリーは、生活のために海辺で拾った化石を売っていた。いくつも大きな化石を発掘したことから、彼女の働きは古生物学の研究を促進した。しかし女性であり身分も低い彼女は、公の場では顧みられることが少ない。それでも彼…

ゲイの歌手が見つけた仲間のいる喜びと苦しさと―『ボヘミアン・ラプソディ』

あらすじ・概要 ライブハウスに通っていた青年フレディ・マーキュリーは、ボーカルがいなくなったバンドに入れてもらい、そこで歌い始める。QUEENと名付けられたそのバンドは、リードボーカルのフレディの歌唱力を武器に有名になっていく。しかし、フレディ…

強烈な個性を持つダンス教師の数奇な過去とは―米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』

あらすじ・概要 ダンサーの道を諦めて翻訳家になった広世志摩は、かつてチェコスロバキアの学校でオリガ・モリソヴナという教師に出会った。強烈な個性を持ち、多くのダンサーを育てた彼女の謎を解くために、志摩はロシアを訪れる。親友カーチャとオリガの数…

生理用品の歴史から女性解放の歴史がわかる―田中ひかる『生理用品の社会史』

あらすじ・概要 女性に月一回訪れる月経。その不快感を減らしてきたのが生理用品だ。戦前までの女性たちの月経対策や、日本初の生理用ナプキンアンネナプキンの誕生、布ナプキンを巡るイデオロギーと効果まで、日本の生理用品の歴史を追いながらジェンダーに…

迷走した人間にしか語れない平成がある―雨宮処凛『ロスジェネはこう生きてきた』

あらすじ・概要 作家の雨宮処凛は、学生のころからいじめに遭い、バンギャになっても美大志望の少女になってもどこか名状しがたい生きづらさを感じていた。作者自身の半生を振り返りながら、「ロストジェネレーション=失われた時代に生きた世代」の息苦しさ…