ブックワームのひとりごと

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【ファンタジーとしてはいいけどミステリとしては物足りなかった】春間タツキ『聖女ヴィクトリアの逡巡 アウレスタ神殿物語』

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聖女ヴィクトリアの逡巡 アウレスタ神殿物語 (角川文庫)

 

あらすじ・概要

聖女ヴィクトリアは、皇帝を決める選挙を見届けるために王宮に上がる。皇位継承者の投票により、私生児として育った騎士、アドラスが皇帝に選ばれてしまう。皆が投票のやり直しを要求する中、二番目の皇位継承者、レーゼ皇女が投票のやり直しに同意しなかった。皇位継承者の全員の同意がないとやり直し投票ができないため、ヴィクトリアたちはレーゼの望み通り皇帝の死について調べることとなる。

 

ミステリとしてはちょっとずるだった

面白くはありましたが、謎解き部分にはひっかかるところがありました。以下、ネタバレを含むのでネタバレをされたくない人はブラウザバックをお願いいたします。

 

いくらつじつまが合っていたとしても、最後に「人を操る能力者がいました!」というオチにするのはちょっと不公平ですね。読者は「推理の前提条件はキャラが共有してくれる」と思っているわけなので。

それなら最初から人を操る能力者の存在を提示して、「操られているのは誰か?」という形式にしてほしかったです。

黒幕が聞かれもしないのに自分が不利になりうることをベラベラ話すのも謎でしたし。

 

とはいえ謎解き部分以外は面白かったです。皇帝を選挙する上での皇族たちの思惑、内面の違いがきちんと書き分けられていました。

聖女は公平な立場でなければならないゆえに、アドラスとの関係に悩むヴィクトリアの悩みも切実なものがありました。それを解決する方法が力業で少し笑ってしまいましたが。

 

これをファンタジーとして見るのであれば面白いのですが、ミステリとしては少しフェアではなかった、という作品でした。