ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

【災害を経験した子どもたちの心を守り育てる】冨永良喜『大災害と子どもの心 どう向き合い支えるか』

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

大災害と子どもの心 どう向き合い支えるか (岩波ブックレット)

 

あらすじ・概要

3.11を始めとする、災害は子どもの心に何をもたらしたのか。被災地に心のケア要員として向かった人々の視点で、トラウマや親しい人の死の受容について考える。傷ついた子どもたちの具体的なケアの内容とは。

 

安易な気持ちでアンケートを取らない

「心のケア」最前線を知っている人ならではの知識が多く、面白かったです。

 

印象的だったのはトラウマを抱えた子どもたちについて知りたい、とアンケートや絵を描かせたとき、子どもたちのその後を考えず情報だけ持ち帰るのはよくない、という意見です。

確かに過去を思い出すのはつらいことなのに、アンケートに答えてもその見返りがなく、情報だけ持ち帰られたら大人でもいい気はしないでしょう。

アンケートを取るのであればきちんとその子どもたちを大切にし、苦しんでいる子どもたちに無理をさせないことが大事です。また、そのアンケートに答えることによって、自分達にいいことがある、というのも重要でしょう。

 

トラウマのケアは、つらい過去を思い出さなくなるのが目標ではなく、ときに思い出して悲しくなっても、前向きに生をできることを目標にしています。

過去を悲しむ時間と、人生を楽しむ時間を分け、悲しみを抱えていても生きていける、という自信が人を強くするのでしょう。

トラウマを抱えた子どもたちのことを思うと胸が痛みますが、それでも生きていこうとする試みには、人の強さを感じます。