ブックワームのひとりごと

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【女性同士のカップルが囚われのパートナーを救って社会を救う】小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』

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ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2 (ハヤカワ文庫JA)

 

あらすじ・概要

夫婦で昏魚(ベッシュ)と呼ばれる魚を獲る世界で、女同士の漁師として生きていこうとするテラとダイオード。自分たちが生きられる場所を探すふたりだが、ダイオードが彼女の生まれた氏族、ゲンドー氏にさらわれてしまう。テラはダイオードを救うため、ゲンド―氏の氏族船「フヨー」を目指す。

 

世界観を掘り下げつつ同性カップルへの差別を描く

主人公たちのチート性が否定される話であり、実際他の氏族はどう暮らしているのか? という話でもありました。
家父長制ごりごりの社会ではありますが、氏族長の妻たちは結構たくましくて海千山千なところがあるのがよかったです。それだけ、男女差別で正当な評価を得られていないことについて考えてしまいますが。

 

作中では、テラとダイオードが「どうして周回者の世界から出ていきたいのか?」という理由が繰り返し示されます。

周回者の世界でも、テラとダイオードを気にかけてくれる人はいます。しかし、そういう人でもテラとダイオードが恋愛関係であることを尊重はしてくれません。
ダイオードの父親小角(オヅノ)も、既存の価値観にとらわれないキャラクターとして描かれているのにもかかわらず、ダイオードに子どもを作ってほしいと言い放ちます。
でも、差別ってそういうものだよな、嫌いじゃない人の差別発言ってきついものだよな、と思いました。

 

最後にテラとダイオードが下した決断は痛快であるとともに、少し寂しさも感じました。
最後に周回者たち側から変わろうとする人たちも出てきたことに、ほのかな救いも感じました。