あらすじ・概要
ニュースや週刊誌を騒がせる自殺だが、実際どのように自殺を防げばいいかはあまり語られていない。社会や政治の単位でやるべきことや、個人として自殺したがっている人とどう付き合うかまで、精神科医の視点で語る。自殺を望む人を治療に導き、過酷な運命から逃れさせることを目指す。
個人と社会の側から自殺を阻止する
自殺(自死)予防関連の本はこのブログでも何冊か紹介していますが、この本はボリュームもありよくまとまっていたと思います。
とりあえず自殺について一冊読みたい場合はいいのではないでしょうか。
著者が何度も語るのは、日本社会において自殺にまともな関心を寄せる人が少ないことです。ニュースや週刊誌でセンセーショナルに語られるわりに、実際社会で自殺を試みる人をどう扱うかはきちんと語られません。
本自体は2006年の発行ですが、日本社会の状態はあまり代わり映えしなくて悲しくなります。芸能人を始めとする有名な人の自殺報道は、配慮なく垂れ流され、自殺について正しい予防方法を知ることができないでいます。
もし知っている人が「死にたい」と相談して来たらどうするか、という例が挙げられていたのもよかったです。引き留めたいとは思うものの、実際にどうすればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。大事なのはきちんと自分はあなたに死んでほしくないと伝えること、そして医療につなげることだということがわかりました。
もちろん精神疾患の治療はすぐに効果が出るものではありませんが、「これは病気なのだ」と知ることで思いとどまる人はいるでしょう。
とはいえ個人でやれることは限られているので、社会の側から自殺の問題に取り組むことが求められます。高い自殺率を下げることに成功したフィンランドや、遺族の草の根運動が続いているアメリカの例は興味深かったです。
自殺は社会の問題なのだ、個人の弱さだけで左右されるものではないんだ、ということが多くの人に伝わってほしいです。