あらすじ・概要
統合失調症の母親を持つ少女は、家の家事や、病気の母のケアを引き受けている。非協力的な父親や、病気を理解しない母親に悩まされながら学校生活を送っていた。大人になり、家から出た彼女は、社会と自分とのギャップに驚く
親を憎み切れないヤングケアラーの物語
著者がヤングケアラーに聞き取り調査を行ったうえで書かれた作品ですが、事例はあくまで存在しないものです。コミックエッセイというよりも、ヤングケアラーあるあるとして読むものでしょう。
ヤングケアラーで親を恨む人、恨まない人、それぞれでしょうが、主人公は親を憎み切れないキャラクターとして描かれています。
親に大切にされなくて苦しかった気持ちと、それでも親を慕い、幸せになってほしいと願う気持ちで引き裂かれる主人公は、見ていてつらかったです。
また、わがままの言えない環境で育った主人公は、他人との適切な距離感がわからず、どのくらいNOを言っていいのか悩みます。成長するにつれて、他人との付き合い方を学んでいく主人公には救われました。
主人公は家庭を持ったことで家族と距離を置きますが、知らないうちに家庭環境が改善していたのも面白かったです。
案外人に任せておいた方がスムーズに行ったりしますし、他人だからこそ気軽に頼ったり頼られたりすることもあります。
主人公の母もつらいだけの人生ではなく、一時的なものではあっても居場所が得られてよかったです。
つらい話ではあるものの、希望が持てるエピソードもあり、ヤングケアラーについて興味がある人には読んでほしい作品です。