ブックワームのひとりごと

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『私だけ年を取っているみたいだ ヤングケアラーの再生日記』水谷緑 文芸春秋

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私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 (文春e-book)[

 

あらすじ・概要

統合失調症の母親を持つ少女は、家の家事や、病気の母のケアを引き受けている。非協力的な父親や、病気を理解しない母親に悩まされながら学校生活を送っていた。大人になり、家から出た彼女は、社会と自分とのギャップに驚く

 

親を憎み切れないヤングケアラーの物語

著者がヤングケアラーに聞き取り調査を行ったうえで書かれた作品ですが、事例はあくまで存在しないものです。コミックエッセイというよりも、ヤングケアラーあるあるとして読むものでしょう。

 

ヤングケアラーで親を恨む人、恨まない人、それぞれでしょうが、主人公は親を憎み切れないキャラクターとして描かれています。

親に大切にされなくて苦しかった気持ちと、それでも親を慕い、幸せになってほしいと願う気持ちで引き裂かれる主人公は、見ていてつらかったです。

 

また、わがままの言えない環境で育った主人公は、他人との適切な距離感がわからず、どのくらいNOを言っていいのか悩みます。成長するにつれて、他人との付き合い方を学んでいく主人公には救われました。

 

主人公は家庭を持ったことで家族と距離を置きますが、知らないうちに家庭環境が改善していたのも面白かったです。

案外人に任せておいた方がスムーズに行ったりしますし、他人だからこそ気軽に頼ったり頼られたりすることもあります。

主人公の母もつらいだけの人生ではなく、一時的なものではあっても居場所が得られてよかったです。

 

つらい話ではあるものの、希望が持てるエピソードもあり、ヤングケアラーについて興味がある人には読んでほしい作品です。