ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

『華は天命を診る 莉国後宮女医伝』小田菜摘 角川文庫 感想

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

華は天命を診る 莉国後宮女医伝 (角川文庫)

 

あらすじ・概要

医学校を卒業した翠珠は、ひょんなことから後宮で働くこととなる。翠珠は陰謀や噂が蔓延る後宮での労働にうんざりするものの、医術を通して妃たちの悩みを解決するうちに、彼女らの複雑な事情を知ることとなる。

 

人間観やジェンダー観がシビアな医女もの

医女ものとしてはよくあるプロットですが、謎解きやキャラクターの関係性でテンプレ的になるのを回避しており、面白かったです。

 

後宮で繰り広げられる人間観、ジェンダー観はとてもシビアです。

女性にとって権力のあるイケメン男性に惚れられることが幸せである、というラブロマンスの典型から離れて、恋愛や家族愛では決して幸せになれない女性たちが多く登場します。

やるせない結末もありますが、現代当たり前に考えられている価値観への挑戦が感じられて面白いです。

主人公は医術によって女性たちの悩みに触れます。主人公は医術を「仕事」としてプライドを持ってやっているので、多少問題のある女性たちがいてもきちんと仕事はします。そこが安心感がありました。

多少の不平不満があっても医者としての仕事をする主人公に職業倫理を感じます。

 

一方で、世界観や設定の説明はやや強引な部分があります。

特にキャラクターが「刑事事件」と言い出したのは笑ってしまいました。この世界に刑事事件と民事事件の違いはあるんでしょうか……?

しかし世界観がリアルかどうかはそこまで問題ではない作品だと思うので、許容範囲です。