ブックワームのひとりごと

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新しい人生にこんにちは 河野裕『ベイビー、グッドモーニング』感想

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死神と聞いて一番最初に思い出す作品はBREACHです。でも最終話はまだ読んでません。

『ベイビー、グッドモーニング』を読みました。 

 あらすじ

ユニクロの服を着た死神の少女。リサイクルのために彼女は魂のきれいなところを集めます。病床の少年、小説家、元クラウンなど、ゆるくかかわりを持った連作短編。

 

べたな内容でも書き方次第

あらすじを見て「ベタすぎるだろう」と思ったんですが、なかなかどうして面白かったです。

短編同士の構成や、そこに描かれる心理描写が魅力的で、ありきたりな設定だということはあまり気にならなかったです。やっぱり書き方しだいですね。

サクラダリセットを読んだときは、正直読みにくい文章だなと感じたんですが、その違和感もこの本にはなかったです。ぐっとわかりやすくなっています。

特別な設定はないけれど、読むと面白い作品です。こう、大々的におすすめするのにはやりにくいですが……。

 

各話感想

『A life-size lie』

病床の少年が三日間だけ寿命を延ばしてもらう。引っ越してしまう「彼女」との関係とは……。

愛も憎しみも本当のことなんだなあという話。親しい相手に感じる感情は、ひとつではないですよね。

 

ジョニー・トーカーの『僕が死ぬ本』』

小説を書かなくなった小説家。彼は「理想の文章」を求めて葛藤します。

この本の中で一番好きな話です。メタな始まり方に度肝を抜かれたし、その後の主人公の苦悩も真に迫っていました。

ありふれた物語でも読者にとっては救いなんですね。

 

『八月の雨が降らない場所』

取引によって10日寿命を延ばした青年は、ある女性の自殺を思いとどまらせようとします。

幸せの連鎖、というのはありえない話なんですけれど、だからこそ登場人物には救いなんでしょうね。そんなに世の中うまくいかないけれど、少なくとも一人は救われているという。

 

『クラウン、泣かないで』

再婚によって新しい家族を得た少女。認知症になってしまった新しい祖父の秘密とは……。

昔は死後の救いなんてものはでたらめだと思っていたけれど、最近はそれを求める人の気持ちもわかるようになりました。いなくなってもどこかにいる、と思うのは残された人の救いです。

彼女もそれで少し救われたのでしょう。

 

まとめ

べたべただったんですけれど面白かったです。雰囲気をつかみたい人はスニーカー文庫ノベルライブラリーに番外編が載っているのでそちらを参照するといいかと。

あまり恋愛要素がないので性別関係なく読める本だと思います。

凶器は壊れた黒の叫び (新潮文庫nex)

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