ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

人間ドラマ

スペースコロニーで幼形成熟の子どもたちが世界の真実に触れる―吟鳥子『きみを死なせないための物語』

あらすじ・概要 人類が地球に住めなくなった世界。人々はコクーンと呼ばれる宇宙上のコロニーに住んでいた。幼形成熟(ネオニティ)で成長が遅いアラタ、ターラ、シーザー、ルイの四人は、祇園という女性と出会う。彼女はダフネ―症という奇病にかかり、16歳…

不倫や失恋を独特の空気感で描く―田島列島『田島列島短編集 ごあいさつ』

あらすじ・概要 ちかの元に知らない女性がやってきた。彼女は姉の不倫相手の妻らしい。姉は家から逃げてしまい、ちかはたびたび訪ねてくるその女性を相手にすることとなる。表題作ほか、不倫、失恋、微妙な関係の異性、できちゃった結婚などをテーマに日常を…

生き別れの妹がいたのはあやかしの住む屋敷でした―椎名蓮月『あやかし屋敷で夕食を』

あらすじ・概要 母の死の知らせが届き、生き別れの妹有沙とと再会した旭。有沙は人でないものたち「あやかし」と屋敷で一緒に暮らしていた。有沙は、蛇神の生贄となってしまったという。価値観のおかしいあやかしたちと同居することを心配した旭は、有沙と一…

子どもは守られるべきものだが戦わなければいけないときもある―小花美穂『こどものおもちゃ』

あらすじ・概要 子役の小学生、紗南の目下の悩みはクラスが学級崩壊を起こしていることだった。その中心にいるのはガキ大将の羽山。紗南は羽山と対決し、荒れた学級を元に戻そうとする。しかし羽山自身も、家庭に問題を抱えていた。羽山は明るく前向きな紗南…

生々しい「毒親」の中に自分自身を見て自己嫌悪になる―アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』

あらすじ・概要 弁護士の妻、ジェーンはバグダードで娘を見舞ってから、イギリスに帰ろうとしたところ、電車の不通により足止めされた。しかたなく宿泊所で過ごすことになるが、そこで友人との会話を思い出す。暇にあかせて考え事をするうちに、彼女は自分自…

アイルランドで、身勝手で色ボケした男どもに女性が苦しむ―『ローズの秘密の頁』

あらすじ・概要 聖マラキ病院で過ごすローズの元に、精神科医がやってくる。彼女は自らの生まれたばかりの息子を殺したが、「いつか息子が迎えに来る」と主張していた。精神科医は、聖書に書かれたローズの手記を読み始める。そこには、ローズの今までの人生…

楽しく明るく、ときに悲哀を込めて老いる男4人組―『ラストベガス』

あらすじ・概要 子どものころからの付き合いであるビリーとパディ、アーチ―、サムの四人組。独身だったビリーが若い恋人と結婚することになり、四人はラスベガスに挙式のために集まった。バチェラー・パーティ=独身最後のばか騒ぎをするために、四人はラスベ…

精神疾患の人間同士がダンスで成長していく―『世界にひとつのプレイブック』

あらすじ・概要 双極性障害(躁うつ病)でトラブルを起こし、妻のニッキから接近禁止命令を出されたパット。情緒不安定になることを繰り返しつつも、妻とよりを戻すことを夢見ている。そんな中、パッとはティファニーと出会う。彼女はセックス依存症だった。…

わかりやすく感動させようとしてきて不愉快―『オカンの嫁入り』

あらすじ・概要 ふたりで暮らしてきた親子の月子と陽子。ある日陽子は、突然金髪の男・研二を連れてくる。「彼と結婚する」と発言した陽子に対し、月子は大きく反発する。月子は研二に対しても陽子に対しても頑なに心を閉ざすが、陽子のある秘密を知って三人…

リアリティのない世界観をリアルに描いちゃった―『博士の愛した数式』(映画版)

あらすじ・概要 数学教師、ルートは教壇に立って自らの過去について語る。彼の母は家政婦として、ある男性の世話をすることになった。数学の博士である彼は、事故によって80分しか記憶が持たなくなっていた。家政婦は、息子のルートとともに博士との交流を深…

ゲイの大人がダウン症の子どもを守る―『チョコレートドーナツ』

あらすじ・概要 ドラッグ・クイーンのルディは、口パクでショーに出演しながらも自分の声で歌うことを夢見ていた。そんな中、同じマンションに住む女性が薬物使用で逮捕される。彼女が残していったダウン症の息子を、ゲイの弁護士、ポールとともに引き取って…

父親の遺産を巡って大騒ぎする三きょうだい―宮本福助『この度はご愁傷様です』

今日の更新は、宮本福助『この度はご愁傷様です』です。 あらすじ・概要 放蕩者だった父が死んだ。葬式を終えた三きょうだいと孫、仁は、彼の残した家の片付けのために集まる。そこで見つかったビデオレターから、三人はダーツで遺産分配を決めることに。し…

出会ったのは私の知らない私、私の知らないあなた-豊田徹也『アンダーカレント』

今日の更新は、豊田徹也『アンダーカレント』です。 あらすじ・概要 夫が行方不明になった妻かなえは、しばらく閉じていた銭湯を開けた。そこに手伝いにやってきた堀という男は、無口で働き者。彼と働きながら、かなえは夫や自分のことをわかっていなかった…

地味なサラリーマンが社交ダンスに目覚める―『Shall we ダンス?』

今日の更新は、映画『Shall we ダンス?』の再視聴感想です。 年始に地上波放送があったので録画して見ていたもの。 あらすじ・概要 平凡なサラリーマン杉山正平は、帰り道の電車の窓から、ダンススクールにいる女性を見かける。その女性に興味を持った彼は…

オチがあまりにもひどすぎるでしょ―『砂上の法廷』

今日の更新は、映画『砂上の法廷』感想です。 あらすじ・概要 大物弁護士の男が殺害され、容疑者として逮捕されたのはその息子の少年だった。弁護士のラムゼイは彼を弁護するが、少年は黙秘を続ける。ラムゼイは少年を無罪にするため手練手管を弄する。母親…

幼馴染の死と、素直にならなかった罪を償うということ―夜野せせり『君が残した青をあつめて』

今日の更新は、夜野せせり『君が残した青をあつめて』です。 あらすじ・書籍概要 幼馴染の果歩、苑子、ハル。三人が14歳のとき、ハルと苑子が付き合いだして果歩は意地悪な一言を放ってしまう。次の日、苑子は事故で死んでしまった。果歩とハルは、高校生に…

弁護士も裁判も「群盲象を評す」である―『三度目の殺人』

今日の更新は、映画『三度目の殺人』の感想です。 あらすじ 殺人の前科がある三隅は、自分の勤める工場の社長を殺した。弁護士の重盛は、彼を担当することになる。だが、三隅の供述は二転三転し、重盛はそれに振り回されていく。やがて、意外な事実が明らか…

気難しい老女の人生の斜陽―『クロワッサンで朝食を』感想【AmazonPrimeビデオ】

今日の更新は、『クロワッサンで朝食を』です。 このビジュアル、微妙にテーマとは違いますね。あまり明るい作品ではないので。 あらすじ 母を亡くし、エストニアからパリにやってきたアンヌ。彼女は同じエストニア人である老女、フリーダの家政婦をすること…

動物たちが歌を通して抑圧から解放される 『SING シング』感想

Amazonプライムに乗り換えました。これはAmazonプライムで初めて見る作品です。 あらすじ 動物たちが暮らす街。コアラのバスター・ムーンは、傾いた劇場を復活させるために秘策を思いつく。それは歌のコンテストをすること。かくして劇場に素人たちが集まり…

逃れがたい人種差別という呪いと、それでも残る希望 『クラッシュ』感想

dtvにあるおすすめ映画記事にあった作品です。 あらすじ 商店を経営しているイラン人、札付きのワルである黒人青年、テレビドラマの脚本家をしている男とその妻……などなど。ひとつの事故をきっかけに、それぞれの運命がリンクしていく群像劇。

児童シェルターで働くグレイスの成長を通して前向きになれる 『ショート・ターム』感想

映画を見ながらとうらぶのイベントを走るので、これから映画感想の更新が増えそうです。 あらすじ 家庭や自分自身に何らかの問題を抱える子どもたちを保護するシェルター「ショート・ターム」。そこで働くグレイスは、ボーイフレンドのメイソンの子どもを妊…

一人でシベリア鉄道に乗ったら出会いがたくさんあった 織田博子『女一匹シベリア鉄道の旅』感想

借り物。タイトルに使われてるフォント、きりぎりすでしょうか。こういうことが気になる体質になってしまった……。 あらすじ ユーラシア大陸を横断するシベリア鉄道。著者は女一人でシベリア鉄道に乗り込み、ロシアから中国を旅する。そこには同乗者の出会い…

この作品のキリストには幸せになってほしかった ニコス・カザンザキス『キリスト最後のこころみ』感想

複数の読書ブログで見かけたので内容が気になっていました。 いや~読んでよかったです。面白かった。 あらすじ マリヤの息子イエスは、周囲の不思議な予兆に悩まされていた。そして天の啓示を受け、仲間を集めて自分の考えを広めていく。彼は十字架にかけら…

日常の中の小さな悲しみを抱えて生きていく よしながふみ『愛すべき娘たち』感想

そういえば、よしながふみの現代ものって初めて読んだ気がします。BLは読んだことないんだな~。 あらすじ 大病から生還した母は、これをきっかけに結婚すると言い出した。その相手とは、娘よりも年下の俳優で……。一組の親子を中心に、それぞれの人間関係が…

ティーンの少女との共依存関係の行方とは 唐辺葉介『電気サーカス』感想

熱烈におすすめしている人がいて気になった本です。 あらすじ テキストサイト「電気サーカス」を運営している主人公水屋口。ネットの仲間と部屋をシェアし、フリーターとして暮らす。そんな中、水屋口は真赤(仮名)という中学生に出会う。

絵描きロボットは人間のために放浪する 菅浩江『プリズムの瞳』感想

あらすじ 何らかのプロフェッショナルになるために生まれてきたロボット、ピイ。しかし彼らは人間の反感を買い、流浪の絵描きに身をやつしている。ただ絵を描くだけのピイたちと、彼らとすれ違った人間たちを描く連作短編。

野球をあきらめられない大人の群像劇 須賀しのぶ『ゲームセットにはまだ早い』感想

なんとなく須賀しのぶが読みたい!となり、入手してきた本です。表紙、よく見るとスーツで走ってるんですね。 あらすじ 所属していた会社の野球部が廃部になり、身の振り方を考えていた高階に、クラブチームから誘いが来る。最初は乗り気ではなかったが、三…

貧困から出ていけることそのものが特別 『女の子ものがたり』感想

これも沢木耕太郎の『銀の街から』に載っていた作品です。 honkuimusi.hatenablog.com あらすじ スランプ中の漫画家、菜都美が過去を回想する。友達だったりさちゃんときいちゃん。しかし彼女らは、長じるにつれて恋人に搾取される。貧困がはびこる故郷で、…

科学技術を駆使した叙情的な短編集 菅浩江『そばかすのフィギュア』感想

ハヤカワ文庫セールで買った本のラスト。 書籍概要 宇宙船の一部屋で暮らしている病気の少女、絵の学校にやってきた機械の少年など、さまざまな情景あふれるSF短編集。

自分を無条件で受け入れてほしいという願望 『極道めし』感想

沢木耕太郎の『銀の街から』に載っていた作品です。原作は未読です。 honkuimusi.hatenablog.com あらすじ 刑務所のとある房に新しい囚人が入ってくる。そこでは「人生で一番うまいものの話をして、一番つばを飲み込ませた人が、正月のおせちのおかずを一つ…