この表紙かっこいいなあと思いながら購入。
書籍概要
バスジャックが娯楽化した社会を描く表題作「バスジャック」、動物の代わりに檻に入る女性の物語「動物園」など、日常世界の中に不思議がある、独特な短編をまとめた一冊。
「バスジャック」がすごい
正直それぞれの短編の面白さに差がありました。だけど表題作の「バスジャック」が傑作だったのでこれだけで買った価値があります。
SFではあるけれど、日常の延長線上に描かれていて、SF初心者でも読みやすいと思います。
各話感想
「二階扉をつけてください」
主人公が近所の人に言われて二階扉なる謎の扉をつける。
最後までよくわからなかったですが、そのよくわからない感じが癖になる話です。ぞくっとくる作品。
「しあわせな光」
光の中に幸せな記憶を見るショートショート。
ショートショートのお手本のような作品。だけどきれいにまとまりすぎていて逆に感想が言いづらいです。
「二人の記憶」
徐々に恋人との記憶が食い違っていくことに気づいた主人公が下した決断とは……。
隣にいても別世界に住んでいるような、不思議な話でした。新鮮な悲恋の内容で面白かったです。
「バスジャック」
バスジャックが娯楽化した社会、主人公はバスジャックに巻き込まれる。
出オチな設定だけれど、それだけで終わらせず、異様な世界観を書ききってくれました。ラストのワクワク感も最高。始まりで終わる短編でした。
この短編集で一番好きです。
「雨降る夜に」
雨の日に主人公のもとにやってきた女性。彼女の勘違いとは……。
綺麗な話すぎてとくに言うことがありません。やっぱり何かしら毒のある話が好きなんだな……。
「動物園」
動物園で動物の代わりに檻に入る女性の、不思議な仕事風景を描く。これは既読だったけれどどこで読んだか忘れました。
話の流れとしてはありがち。けれど仕事の設定が今までにないものになると途端に面白くなるから不思議です。
「送りの夏」
女の子が、父と自分のもとを去った母に会いに行くと、そこには動かない人々がいた。
最後に種明かしがあると思ったらなかったので消化不良。「二階扉~」みたいに異様さを強調した話でないと、種明かしをせずに終わるのは不満が残るかもしれません。
まとめ
面白さは短編ごとにばらつきがありますが、「バスジャック」「二人の記憶」「動物園」が面白かったので買ってよかったです。
なんとなく不安になる雰囲気がたまらないですね。