ブックワームのひとりごと

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座敷牢に閉じ込められた彼女はなぜ怖い話を集めるのか オキシタケヒコ『おそれミミズク あるいは彼岸の渡し網』感想

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おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)

よその読書ブロガーさんがおすすめされていたので気になった本。読み終わってから表紙を見るとなるほどなーと思います。

この本はブログの収益で買いました。ありがとうございます!

 

あらすじ

新聞配達員の瑞樹は、ツナという座敷牢に閉じ込められた女の子に怖い話を読んでいる。座敷牢を管理する老女に「この家のことを他言してはいけない」と言われつつ、どうにかして彼女を救い出したいと思うが……。

 

都市伝説+SFの融合

都市伝説とSFの融合が面白かったです。詳しく書くとツナの正体についてネタバレしなくてはならないのでぼかして書きますが、生存を望む「彼ら」の切実な心が胸を打ちました。

結局彼らもなんとか生き延びたかっただけで、悪い存在ではないんですよね。

少しずつ世界の全体像が明かされ、「なぜテーマが都市伝説なのか」という部分がきっちりまとめあげられているところが、SF好きとしてはわくわくしました。

ただなんとなく受け入れていた設定が、重要なものだと気づく瞬間は、快感がありました。

座敷牢に閉じ込められた少女という、古典的なテーマから新しいものが生み出されていて新鮮でした。

 

ちょっと心理描写は弱いかも

一方で、心理描写が弱いな、と感じるところがありました。

「主人公の瑞樹がなぜツナを助けたいのか」というのは一応説明されてはいるんですが、さらっと書かれているだけなのであんまり胸に迫ってこなかったです。その上、なぜ瑞樹がツナを好きなのかも、理屈ではわかるけどとってつけたような感じがしてしまいました。

欲を言えば、ツナと瑞樹の関係性にもうちょっとページが割かれていればよかったと思います。

ただその辺は世界観を楽しむ小説だと思えば我慢できる範囲です。独特のSF伝奇っぷりとその種明かしで十分値段のもとはとれました。

尺の問題もあるだろうので、この方の書くもっと長いシリーズを読んでみたいと感じました。

 

まとめ

面白かったけれど、もう一声あるともっとハマれた! という感じですね。

作風や設定はとても好きなので、他の作品も余裕があればチェックしてみたいです。