あらすじ・書籍概要
教育実習生として母校の高校に帰ってきた広瀬は、高里という生徒に出会う。彼の周りには、事故が頻発していた。学校では、「高里は祟る」といううわさが飛び交う。広瀬は高里に興味を持ち、何かと世話を焼くようになるが……。
広瀬、だいぶだめ
改めて読み返してみると広瀬はだいぶだめでした。
高里に対して何かと世話を焼き、家にも住まわせますが、その本質は「ここではないどこか」を求めている男性です。
ぼんやりした郷愁により、明らかに異質な高里に惹かれ、自己投影してしまいます。しかし広瀬とは違って、高里の抱える「異質」はレベルが違いました。
オチまで読むと、結構皮肉な物語だったのだなという印象を受けました。
軽いけがから始まって、集団自殺、建築物の倒壊など、雪だるま式に被害が広がっていくのは怖かったです。
自分のせいではないのに、どうしようもなく人が死んでいく。その中でも淡々としている高里は、そうふるまうしか方法がなかったんでしょうね。
それとともにそんな状況で高里に尽くし続ける広瀬もそれはそれで怖いところがあります。やっぱりこの人も歪んでいますね。
私は『黄昏の岸 暁の空』の展開を知っているので、「祟った」存在たちの言い分を知っているのですが、殺された人たちにそんなことは関係ないんですよね。
ここまで来るとある意味事故みたいなものですが、それゆれにやりきれないホラーでした。
「十二国記の最初に読め」という意見もありますが、私は好きなタイミングで読めばいいと思います。読まなくても本筋はわかるので。
それから、この作品はどこまでも「人間」の話なので十二国記とは経路が違うというのも理由です。
まとめ
面白いんだけれど、心にダメージを食らう作品ですね。
広瀬には地に足をつけて生きてほしいです。