レンタルコミックで『弟の夫』を読んでいました。
ラストが気になったので最終巻は電子書籍で買って読みました。
あらすじ・概要
シングルファザーとして娘を育てる弥一のもとに、ひとりのカナダ人男性が訪ねてくる。彼の名はマイク。弥一の「弟の夫」だという。彼は弥一の家に滞在し、しばらく街を見て回ることになる。最初は戸惑っていた弥一だが、マイクと交流を重ねるうちに、同性愛者への見方を変えていく。
弟がゲイであることを受け入れる、とはどういうことか
同性愛者差別や偏見をテーマにはしていますが、そういう差別や偏見を持った人たちを、一方的に悪人に描かないところが優しかったです。でも、だからこそつらい部分もあるんでしょうね。昨日まで親切だった人がゲイであることを告白した瞬間豹変するかもしれないと思ったら、そりゃあ内緒にしたくなりますよ。
作者の本業はゲイ向けのポルノ漫画家なのですが、この作品では性的な要素が丁寧に取り除かれています。拍子抜けするくらい「健全」。弥一の子どもである夏菜と遊んだり、死んだ伴侶の思い出の場所を巡ったり、そういう要素しかありません。
でもそれこそが偏見だったと気づかされました。ゲイの人だって性的なこと考えてる時間より普通にご飯食べたり買い物したりする時間の方が長いわけで、そういうゲイの人の「日常」を描くことに意義があったのではないでしょうか。
そしてその平凡なやりとりを描くことによって、弥一が弟がゲイであることをしっかり受け止め、マイクのことも大切な家族と認識していく。その過程が地味ではありますが、快かったです。
一番大事なのは本人の気持ち
本人が望むことならただ見守り
幸せならば祝福する
そんな簡単なことだったのに
俺は…
(P117)
正直ストーリー漫画としては、説明的すぎたりテーマが露骨すぎたり完璧ではないです。しかし同性愛者について誤解のないように伝えるには、このくらいしつこく描かないといけなかったのだろう、とも思います。
『弟の夫』まとめ
「同性愛者って何だろう?」と思ったとき、気軽に手に取れる漫画だと思います。学生さんにもおすすめ。
自分が当たり前だと思っていることは実は当たり前ではない、それでも自分と違う存在と案外やっていけるものだ。という話でした。