今日の更新は、佐光紀子『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』です。
あらすじ・概要
日本の主婦は家事をしすぎである――。家事の専門家である著者は、「家事をやってきちんと暮らす」という価値観が日本の女性を苦しめているのではないかと考えている。海外の事例や、日本国内のデータを引きながら「家事はそこそこに暮らす」生活を提案する。
話に論理が伴っていない
うん、主張自体には賛成します。賛成しますが、意見に論理が伴っていない部分が多いですね。
その最たるものが著者の欧米礼賛ですね。著者はことあるごとに欧米の社会制度や文化を褒め、日本を劣ったものとして語ります。
私は専門がドイツで、それに伴ってヨーロッパの福祉制度、社会制度について調べたことがあります。こんな風に「日本が悪くて欧米がすごい」と単純化できる問題ではないことを知っています。
もちろん日本について、そして欧米についてしっかり調べた上で批判するならありなのですが、どうにも自説を言いたいがために適当な情報を引っ張ってきているところがあります。
「自説を展開し、自分が現代にふさわしくないと思っている生活を否定したい」という雰囲気をゴリゴリに感じるんですよね。
著者は学者ではなく家事の専門家なのだから、主語を「私」にして、専門家として見聞きしたことを踏まえてこの意見を言うのなら、もっと説得力を感じたと思います。
一方で、さっき「主張自体には賛成する」と言った通り、日本の主婦は家事をやりすぎるのは事実です。もちろん好きでやっているのならいいのですが、「家事をきちんとやって暮らすべき」という圧力はなくすべきです。
この本は、そういう圧力に苦しんでいる人の鬱憤を晴らす目的であれば使えるのではないかなと。
何かを調べるため、論理を組み立てたいために読むのはおすすめしませんが、憂さ晴らしにはちょうどいいかもしれません。