あらすじ・概要
ペスト、天然痘、エイズ、風疹、インフルエンザ。何度も人類の前に立ちはだかり、甚大な被害を出してきた感染症。感染症と戦うために、人類は何をしてきたのか。感染症撲滅にかけた人々の行動や研究を紹介し、人と感染症の歴史を振り返る。
差別と疫病は繋がっている
医学的な説明もちょろっとありますが、基本的に歴史の本です。文系です。
前にレビューした『人類と病』にかぶるところもあるので、こちらの本が難しそうで手に取りづらいという人はこちらの『人類VS感染症』にしてみては。
読んで思うのはハンセン病への差別だったり、疫病に侵された人を運ぶのに囚人が駆り出されたり、疫病と差別は一緒にやってくるということです。新型コロナウイルスの時代である今も、感染拡大が激しい地域の人が疎まれたり、医療従事者がいわれのない差別を受けたりしていますよね。
印象的だったのは天然痘の章。人類が撲滅に成功した病気です。その撲滅を導いた医療スタッフたちの行動がかっこいいです。天然痘の患者を探して、天然痘の神様にお参りに来ている人を見つけ、その周囲の人に天然痘ワクチンを打ったそうな。ものすごい地道な作業です。
インフルエンザのパンデミックである「スペイン風邪」の章も大変でした。第一次世界大戦中に流行ったんですが、その流行が戦争の行方にも影響をしたという……。
スペインで流行したからスペイン風邪なのではなくて、第一次世界大戦でスペインが中立国だったからスペイン風邪と呼ばれていたそうです。戦争中だからみんな情報を伏せる→中立国のスペインの感染情報を得られる。そう思うとスペインにとって不名誉なネーミングですね。
多数の感染症を扱っているだけあって解説自体はざっくりしているけれど、これをとっかかりに調べていくのにはよかったです。巻末の参考文献も調べてみよう。