ブックワームのひとりごと

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受刑者にお金をかけることは「社会の益」になるだろうか―『ドキュランドへようこそ 世界一豪華な刑務所の内側』

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「世界一豪華な刑務所の内側」

www.nhk-ondemand.jp

テレビ番組の感想は普段書かないんですが、これは面白かったので書き残しておきます。

 

あらすじ・概要

ノルウェーのハルデン刑務所は、「世界一豪華な刑務所」と呼ばれている。受刑者の個室はシャワーやテレビを備え、恋人や妻とコテージのような面会室で面会することもできる。イギリスの元刑務所担当大臣を語り手に、「刑務所にお金をかけること」の効果と是非を問う。

 

「更生」の理念の素晴らしさと個人的感情との板挟みを感じる

元とはいえ、政治家を語り手に置くのが何だか新鮮でした。彼女は、(それがフリか本心かは置いておいて)最初はハルデン刑務所のあり方に疑念を持っており、否定的な目で刑務所の豪華さを見ています。

しかしながら、ハルデン刑務所の刑務官たちは彼女に生き生きと刑務所の中で過ごし、就職訓練をしたりラジオに出演したりする受刑者たちを見せます。刑務官たちは、受刑者が人間らしく過ごすことで、より罪からの更生が図れると信じているのです。

ノルウェーの再犯率は25%、これは先進国の中でもかなり低い割合です。

その一端を担っているのが受刑者への手厚いフォローです。

 

ただ、ハルデン刑務所の理念は素晴らしいものではありますが、一個人としては、やりきれない気持ちもあるんですよね。だって彼らは性犯罪や殺人を犯した凶悪犯だからです。

確かに世の中のため、将来のためには再犯率を下げた方がいいに決まっているんですが、それはそれとして、「被害者は『自分らしく生きる権利』を奪われたのに、なぜ凶悪犯はそれを認められるのか」と思ってしまうんですよ。

ただ、これは高福祉国家とそうではない国との違いかもしれません。ちゃんと払った税金に対してリターンが実感できれば、刑務所にお金をかけることも受け入れられるのかもしれません。

 

ハルデン刑務所は画期的な刑務所ではありますが、その建設費用が莫大であるがゆえに、後続するような刑務所は出てきていません。このメソッドが成立するためには、ハルデン刑務所がはっきり「再犯率を下げる」ということを証明しなければなりません。

結果が出るのは20年後、30年後かもしれません。それでも大きな賭けに出たノルウェーの発想はすごいし、今後が気になる話題でした。

 

「世界一豪華な刑務所の内側」

「世界一豪華な刑務所の内側」

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