あらすじ・概要
学校に忘れ物を取りに帰った少年、佐藤一郎は、リサーチャーと名乗る謎の女の子に出会う。しかしその正体は佐藤良子という一般女子。妄想をこじらせた彼女は異世界の住人を演じていたのだ。担任教師から脅されて良子の面倒を見ることになった佐藤は、クラスの半数を占める妄想戦士たちの奇行に巻き込まれることになる。
不思議と生きたい人間が「普通」とどうやって折り合いをつけるか
久しぶりに読み返したくなって読んでいました。
中二病をテーマにした作品ですが、作中に「中二病」というワードは出てきません。おそらくあえて使っていないのではないかと思います。
なぜかというと、この作品は「はいはい中二病」みたいなレッテル貼りに抗おうとする作品だからです。
確かに空想の中で遊ぶ少年少女は「イタい」。それは確かです。しかしながら、彼らは学校では「普通」に振る舞わなければならない、空気を読んで言葉のキャッチボールをしなくてはならない、という固定観念に苦しめられている子どもたちでもあります。
中二病の痛々しさ、みっともなさを描きながらも、なりたい自分を演じて遊んではいけないのか? 不思議や空想を心の支えにしてはいけないのか? と問いかけてきます。
というメッセージ性もありますが、この作品は面白トンチキコメディでもあり、妄想にどっぷりハマったクラスメイトたち、そして佐藤の過去もげらげら笑えます。
疾走感あふれる展開の速さで、痛気持ちいいような快感を感じました。
恋愛要素はかなりあっさりしているんですが、このくらいの感じがテーマにもふさわしいと思います。あくまでメインは痛い青春の中で、「普通」と折り合いをつけて生きる方法の話です。