あらすじ・概要
企業が練って制作しているCM。しかし、それが特定の層の反感を買い「炎上」してしまうことがある。なぜ、そんなことが起こるのか。それは性別への固定観念がありありと描かれているからだ。ジェンダー的背景を解説し、炎上するCMのパターンを整理。CMの面白さと怖さを語る本。
固定観念を疑わないから「雑」になる
著者の意見に全面的に賛成できるわけではありませんが、ひとつの意見としては面白かったです。
著者は炎上するCMをパターン化し、四つの種類に分類します。「性役割の現状追認」を女性・男性の視点から、「訴求層の分断」、「訴求層の読み間違い」の四つです。
紹介されている炎上CMは、総じて雑というか、「女性/男性はこんなもんだろう」という固定観念に凝り固まっています。そもそもCMの中のシナリオが破綻しているものすらあります。
自分の中にある「普通の家庭」「普通の女性」「普通の男性」という概念を疑ったことがないんでしょうね……と思ってしまいます。疑ったことがないから新しい価値観についていけていないんです。
キズナアイなど、「性的」と批判された萌え絵キャラクターを中心した章もあり、オタクとしては耳が痛かったです。
Twitter見てるとしょっちゅうエロい絵が流れてくるから麻痺しているんですよね。
公的な場所で性的な描写をどこまで許すかというのは文化によるものが大きく、結局だれもが納得する正解はないのだ、と著者は説きます。そりゃオタクとオタクじゃない人とでも文化は全然違いますからね。
ただ、オタク多くの人が通る公的な場所や、公的なイベントで性的なイラストを出すのはあまりよろしくないだろうなと思います。
話はそれますが「艦これ」は露出の多いキャラが多いのに街中に掲出されるときは露出控えめの私服イラストにしていたのを見て、「わかっている」と思いました。
巻末には西暦順に炎上CMが紹介されていて、著者のコメントも添えられています。自分がいまいちに思ったCMを著者が「アリ」だと思っている場合もあり、この問題にはっきりした正解はないのだと感じます。
一方で誰かが語り、本にしなければいけないテーマだとも思います。そういう意味では面白かったです。