あらすじ・概要
子ども時代の著者は、アゲハチョウが決まった道を飛ぶことに気づいていた。なぜなのか。研究者になった著者はアゲハチョウの道について調べ始める。何度も実験を繰り返し、見えてきたアゲハチョウの習性とは……アゲハチョウ研究をテーマにした文と、科学についてのエッセイを収録した本。
優しい語り口で生物の実験を描く
科学の本といっても語り口は大変優しく、専門用語もあまり出てこない気安い読み物です。肩の力を抜いて読めました。
しかし動物の習性を調べるときの試行錯誤が描かれていて、その「うまくいったこと」「いかなかったこと」を総合して少しずつ真実に近づいていく過程が面白いです。
研究というのはサクッと終わるものではなく、泥臭く地道に続けていくものなのだなというのがわかります。
実験自体は面白いんですが、その過程でメスを殺して体の一部を取り出したり死骸だけを使ってオスがどう行動するか調べたり、昆虫の死が付きまとっているところはちょっと怖かったです。まあ、動物への実験というのはそういうものなんでしょうが。
犠牲の結果人間の生活が便利になっているのだからあまり文句は言えません……。
ところどころアゲハではないチョウの習性についても書かれていて、トリビア的な面白さがありました。同じチョウでも習性が全然違うのが面白いです。進化とともにそれに伴う本能のプログラムも複雑に枝分かれしているんだなあ。
テーマ的に夏休みの読書にいいのではないでしょうか。