ブックワームのひとりごと

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多重人格の少女の中にいる邪悪な人格が周囲に破滅をもたらす―貴志祐介『十三番目の人格 ISOLA』

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十三番目の人格 ISOLA (角川ホラー文庫)

 

あらすじ・概要

人の心を感じ取るエンパスである由香里は、阪神大震災の被災地で千尋という少女と出会う。彼女は多重人格(解離性同一障害)を発症しており、頭の中で様々な人格が乱立していた。治療を試みているうちに、由香里はその中に磯良(いそら)という邪悪な人格があることに気付く。

 

ラストシーンが最高に悪趣味

私のメンタルが沈んでいたのもあるだろうけど、「面白くなってきたな」と思うのが遅く、序盤は退屈でした。

あまりシーンとシーンのつながりが魅力的に感じられなかったです。

「これ同作者の別作品でも見たな」という展開も多く、デビュー作なのもあってプロトタイプ的な立ち位置なのかもしれません。

 

しかしラストシーンを見た瞬間の「悪趣味~!!」と叫びたくなるような感覚はすごくよかったです。こういう終わり方はホラーの真骨頂ですよね。いやあぞくぞくした。

作品には一貫して言葉遊びが出てくるけれど、ラストも言葉遊びで締めるところが最高に楽しくてにこにこしてしまいました。

 

しかし本筋とはちょっとずれますが、舞台は阪神大震災後の神戸ということで、いろいろ思い出すことが多かったです。たぶん私は大震災を覚えている最後の世代なので(当時4歳)。

発生当時はよくわかっていませんでしたが、十何年にもわたって何度も繰り返し流れるニュースの中で、他人事ではない気持ちがありました。

この話には震災に対するメッセージがないとは思いますが、なくても感慨深くなってしまうものですね。