ブックワームのひとりごと

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うだつの上がらない元東大生が銭湯で死体処理を手伝って成長する―『メランコリック』

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メランコリック

 

あらすじ・概要

うだつの上がらない元東大生、和彦。彼は銭湯で高校の同級生百合と再会し、彼女に会いたいがために銭湯でアルバイトすることになる。しかしそこは、殺し屋が人を殺害する場所だった。死体処理後の掃除をする羽目になった和彦だが、高額な給料によって、その仕事に適応し始める……。

 

倫理がないのに一部分だけリアリティがあるので話に飲まれてしまう

めちゃくちゃ倫理がない。殺人の仕事のことが特に批判されることもなくあっさり終わってしまいます。

でもこの作品が完全に倫理がめちゃくちゃかというとそうは思えないんですよね。なぜかというと、和彦の「うだつの上がらない高学歴青年」のみっともなさにめちゃくちゃリアリティがあるからです。

和彦は頭はいいけれど考えなしなところがあり、裏の仕事をしているのに彼女を作ってしまうし、高い収入で高級レストランに行って結構楽しんでしまいます。この主人公の倫理観のざるさ、みっともないけど「ありそう」だと思うんですよね。基本的に自分の意思がなく、その場の快楽に流されてしまいます。

逆に和彦のバイト仲間、松本はチャラいけど要領がよく責任感もあるいい奴で、和彦とは対照的です。殺人を受け入れてしまうくらいには倫理はないけど、倫理はないけど……。

このうだつのあがらなさと要領の良さの対比があるから荒唐無稽なこの作品にぎりぎりリアルの部分があるんですよね。

 

あと、せりふがちょっと聞き取りづらいんだけど作中にBGMのないシーンが多かったので助かりました。耳が弱いもので……。ぼそぼそしゃべるのにBGMばかり大きくする映画は反省してほしい。

 

ラストがあっさりしすぎだろうとか、反社会的職業の登場人物にリアリティがないとか、ツッコミどころはあります。しかしそれ以上に「倫理的に問題がある仕事で精神的に成長してしまう」という面白くて恐ろしいテーマを魅力的に描いてしまったその力に押し流されてしまいました。すごい映画だ。

銭湯図解

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