あらすじ・概要
罪を犯して死んだ「ぼく」は、プラプラという天使から再チャレンジの機会を案内された。次の人生に転生するには、自殺をした真という少年の身体にホームステイして自らの罪について思い出さなければいけないと言う。「ぼく」は真として生活することになるが、真の家族はそれぞれ問題を抱えていて……。
人の多面性を受け入れて成長していく
久しぶりに読み返すとよくできた作品だと思いました。いや、ジェンダー観や子どもの扱いに若干古臭さはあるんですが、人の弱さと優しさのバランスがいい作品だと思います。
コミカルな語り口とは裏腹に描かれている題材は重いです。親の不倫、援助交際、いじめなど、「ぼく」は真が直面していた問題に代わりに向き合っていきます。
しかし家族の本心に触れ、学校で友人ができ、美術室で好きな絵を描いているうちに、「ぼく」は真の命を惜しむようになります。
真自身を含めて、人は弱く、ずるいところもある。半面、自分の知らない優しさ、気遣い、魅力に触れることもあります。「ぼく」は人の多面性を知り、受け入れていくことで少しずつ成長していきます。
しかし、真はすでに死に、「ぼく」の魂が抜けたあとは、また抜け殻になってしまいます。さあどうするか。
オチ自体は読者の予想通りのもので、驚きはそれほどありません。しかし、「ぼく」が自分を客観視し、己の罪と向き合うためにはこの過程が必要だったのだとわかります。
クライマックスでしんみりしているところで、ラストシーンのプラプラの、「ぼく」への雑さに何だかほっとしました。生きていくと言うことは、そのくらい肩の力を抜いて、雑でもいいのだと思えてきます。
読んでいてちょっと気が楽になりました。面白かった。