ブックワームのひとりごと

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詰め込み過ぎだが売れ筋に媚びない姿勢は嫌いじゃない―沙川りさ『鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫』

鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)

 

あらすじ・概要

小寺という領地の生き残りであり領主の菊は、山の中で不思議な少年に出会う。彼に剣術を教えてもらううちに、菊には恋心が芽生え……一方旅する薬師の文梧は、うさんくさい青年主水(もんど)とともに小寺の生き残りたちを助けていた。小寺の民たちは、「青山衆」という鬼たちに追われていた。

 

ライト文芸あるあるが嫌いな人なら楽しめるかも

一言で言うと詰め込み過ぎ。作者、どうしても設定したことを全部出したかったのでしょうが、それにしてもいらない情報が多すぎます。

まずキャラクターみんな説明口調でしゃべります。素直だったり正直だったりするキャラはまだしも、ミステリアスなキャラまで自分の感情をものすごいわざとらしい口調で口にするから口調によるキャラ崩壊がすごい。

キャラクターの過去とか、回想とか、端折ってもなんとかなるような話まで書くから重要なシーンがどこかわからなくなります。

一方で、ものすごく重要な書類が伏線もなく突然出てきたり、めちゃくちゃいいシーンのはずなのに巻きの展開でちゃんと余韻が味わえなかったりいろいろと惜しい。

 

しかし、著者はこの作品ものすごく書きたかったんだろうなとわかるので、あんまり強く酷評できないんですよね。

派手なところのない和風ファンタジー、シリーズ化できないであろう結末、ライト文芸には珍しい悲恋、女性向けにしてはグロい描写。売れ筋を書こうという発想ではないんですよね。そこは結構好感が持てます。

詰め込み過ぎて展開がおかしくなっているところも、クオリティのためにストーリーを捨てるという決断ができなかったのかな、と思ってしまいます。

 

正直おすすめはできないけど、売れ筋ばかり売り出すライト文芸業界に不満を持っている人なら結構楽しめるかもしれません。