ブックワームのひとりごと

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高知の不思議なマンションはどのようにして誕生したのか―古庄弘枝『沢田マンション物語』

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沢田マンション物語 2人で作った夢の城 (講談社+α文庫)

 

あらすじ・概要

高知にある奇妙なマンション、沢田マンション。それは、専門的に建築を学んだことのない夫婦が、増築を繰り返して建てたマンションだった。沢田マンションの構造の紹介から、夫婦の半生、沢田マンション誕生の秘密を紹介。不思議なマンションは、夫婦の温かい気持ちからできていた。

 

昭和の空気と優しくてウェットな関係性

今はいろいろ倫理が進みましたが、昔はアウトローと普通の人の境界線ってあいまいだったんだろうな、という話でした。結構物騒なエピソードが多いです。

昭和の薄暗さと明るい雰囲気が同居する、時代を感じる描写は面白かったです。

 

沢田マンションはお金のない人や訳ありの人も受け入れ、家賃も柔軟に回収しているので、地域の福祉も支えているところがすごいです。現代ではなかなかできないことだと思います。

こういうウェットな関係性に、助けられ救われる人も多いのでしょう。

 

ただ、文体がロマンチックな描写に寄っていて、そこはあまり好きではないです。

特に児童労働について、懐かしさをもって書くのはいかがなものかと思います。働きすぎて流産するシーンなんか心が痛みましたよ。

それから確かに沢田夫婦の人生はユニークですが、すなわち「学歴がいらない」ということにはならないと思います。だってこの夫婦、普通に学校行ってても優秀だったと思いますし……。

これは20年前の本だから仕方ない部分もありますが。

 

ちょっとノスタルジーに寄りすぎているところはありますが、内容は面白かったです。