ブックワームのひとりごと

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マラソンの描写の薄さと説教臭いせりふにうんざり―森絵都『ラン』

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ラン (角川文庫)

 

あらすじ・概要

家族を亡くし、育ててくれた親戚とも死に別れた環は、虚無的な生活を送っていた。ある日不思議な自転車によって死後の世界にたどり着き、そこで死んだ家族と出会う。環は頻繁に死後の世界に行くが、やがて自転車を元の持ち主へ返さなければいけなくなり、環は自分の足で生死の境を超えるためランニングを始める。

 

 

作者の文章力があるから読めるものには仕上がっていますが、全体的に杜撰な作品でした。

 

作中にファンタジー要素があるのはいいとして、それが描写として納得のいくものとして書かれていません。

マラソンをテーマにした作品なのに走っている描写が少ないし、いまいち主人公がマラソンに救われる過程に説得力がありません。

総じて「マラソン」や「死後の世界」へのこだわりが感じられません。

 

作品のメッセージも、キャラクターが自然に気づくのではなくキャラクターにしゃべらせているので、読んでいて白々しく感じます。

こんな説教臭いしゃべり方するやつ嫌だよ!

もうちょっと自然な形で「キャラクターはこう思っている」ということを示してほしかったです。

 

全体的に「これが書きたい」という熱意をいまいち感じられない作品で、楽しくなかったです。