ブックワームのひとりごと

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『サクリファイス』近藤史恵 新潮文庫 感想

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サクリファイス(新潮文庫) サクリファイスシリーズ

 

あらすじ・概要

ときに敵に順番を譲り、ときにチームメイトのために犠牲になる。独特な文化を持つ自転車競技に魅せられた主人公は、選手として戦っていた。しかし、彼はチームメイトにまつわる疑惑を知ってしまう。不安や疑念の中、事件が起こる。

 

独特な文化を持つ自転車競技での葛藤と犠牲

『サクリファイス』は英語で犠牲を意味します。そのタイトルの通り、様々なアプローチから犠牲というテーマを扱った小説でした。

謎解き要素はありますが、どちらかというと自転車競技を通した人間関係の方がメインです。ミステリというよりサスペンスでした。

 

自転車競技は、敵同士なのに順番を譲る、同じチームの選手を勝たせるために他の選手が犠牲になる、という特殊な文化があります。自己犠牲と紳士的なルールに、登場人物が影響されているのは面白かったです。

自分が好きなように走り、優勝したいという思いと、自転車競技特有の価値観との葛藤が、胸に痛かったです。

 

結末を読んで、悲しんでいいのか怒っていいのかよくわからない気持ちになりました。読者としても心の置き所がわからない、残酷な終わり方でした。