ブックワームのひとりごと

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願いを胸に、運命の塔を上ろうとするふたりの旅人―宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー (4)運命の塔』

ブレイブ・ストーリー (4) 運命の塔 (角川スニーカー文庫)

 

あらすじ・概要

動力船の設計図を持ったミツルを追って北の帝国に渡ったワタル。皇都ソレブリアでは、ミツルの行った残虐な行動が明らかになる。常闇の鏡は破壊され、魔族が魔界から押し寄せる中で、ミツルは幻界のため、自分自身のため、ある決断をする。運命の塔を上るのはどちらなのか……。

 

幻想から帰るけれど幻想を否定しない

何回読んでもワタルとミツルの別れは名シーンですね。終章であることが判明しても、ふたりの物語はもう交差しないのが美しいと思います。

祈りの言葉に「はい」と答えるミツルを想像するとここまでのことを思い出して泣きそうになってしまいます。

 

終盤になって、ここまでの物語を強くリフレインし、ワタルのたどってきた道筋を良いものも悪いものも否定せず見せます。

ブレイブ・ストーリーは「幻想の世界から行って戻ってくる」という話ではありますが、それと同時に幻想を否定しない、幻想は人の心を救ってくれるという話でもあると思います。

自らの幻想を糧にし、肯定するためにワタルは現世に帰ってこなければならなかった。強いゲーム賛歌、ファンタジー賛歌を感じます。

 

あれだけしっかり現世でのワタルの苦しみを描いておいて、帰還後の描写はあっさりしています。でもそれでいいのでしょう。ワタルは今がどうあれ、運命を切り開いていく力を得たのだと思います。その事実だけで物語の結末足り得ます。

 

久しぶりに読み返して、子どものころ気づかなかった部分を大人の視点で見られて面白かったですね。また記憶を失ったころに読みたいです。