ブックワームのひとりごと

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社会のヒーローなら何でも許されるわけではないです―『ゴヤの名画と優しい泥棒』

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あらすじ・概要

イギリスの老人、ケンプトン・バントンは老人や寡婦もBBCの放送料を払わなければならないことに憤りを感じ、息子とふたりで社会活動をしていた。政治活動のためにロンドンに向かったケンプトンは、そこでナショナル・ギャラリーのゴヤの名画を盗み、それを人質に政治的要求を呑ませることを思いつく。

 

ヒーローなら許される、という願望を感じてしまってつらい

雰囲気やあらすじ自体は嫌いじゃないんですけれど、細部にイラっとくるシーンが多くて集中しづらかったです。

 

まず、「社会のヒーローとしての男性と、それに無理解な女性」という構図はもう見飽きちゃって2022年にやる必要があるのかって話なんですよね。実話なので改変に限界はあるかもしれませんが、演出や描写で上手いことやってほしかったな、と……。

そもそもひたすら妻に迷惑をかけ続けたケンプトンが、「〇〇を〇〇〇た」くらいで今までの迷惑がチャラになり、ハッピーエンドを迎える……というのは違和感があります。ケンプトンがだめ男でありながらものすごい人間的魅力があり妻もそれを好いているとか、あるいは許したわけではないけど一緒に生きていく覚悟を決めたとかなら、まだ納得いくんですが。だいたい彼がやらかしたのはケンプトンの影響もあるだろうし……。

 

あと、女性記者がちょっとずれた質問をしてクスクス笑われる(別に聞いたっていい質問だとは思うんですが……)とか、女性の筆跡鑑定人が「いいケツだ」と言われるシーンがあったりするからイライラしてきます。

確かに昔が舞台の作品だからこういう差別もあっただろうけど、どういう文脈で書くかが問題になってきます。あったから出す、というのは雑ではないでしょうか。

 

全体的に、「ヒーローになればいろんなことが許される」と思っている作品であり、男の願望を感じてちょっときついものがありましたね。ケンプトンが社会のヒーローである以外に、魅力がある存在だったらまだましだったと思いますが。