ブックワームのひとりごと

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震災がテーマなのに震災である意味がない―日比生典成『海をみあげて』

海をみあげて (電撃文庫)

 

あらすじ・概要

受験生の真琴は、くじらが空を飛ぶ町で暮らしている。町にはかつて大きな地震があり、その後から空を飛ぶくじらが現れるようになった。くじらが出現すると町にはモーツァルトが流れるのだが、それは誰が流しているのか……。

 

震災である必要がないのが致命的な作品

内容としては特に尖ったところのない、少女が町の人と出会ってなんやかんやするだけの話ですが、描写が美しく生き生きとしているのでそれだけでも読んでいて楽しかったです。

ベタな話でも上手い人が書けば面白くなる好例。

さくさく読めるし、登場人物にいい人が多いので気持ちいいです。これはこれでアリ

 

ただ……ある意味致命的だと思うんですけど、大震災をテーマにした作品なのに大震災からの復興の描写がめちゃくちゃ雑だし、そもそも大震災である必要性もないんですよね。

ストーリーを踏まえても、何かしら人が多く亡くなる事件・事故が存在しさえすればいいので現実には存在しないファンタジーな災害でもいいわけです。

それでもわざわざ国民の何パーセントかが強い悲しみを抱いているであろう「震災」を題材にするなら、相応の覚悟を持ってやってほしかったし、「この作品は震災をテーマにしないと描けないな」というものにしてほしかったです。

 

実力自体はある人だと思うんですけど、いかんせん取り上げた題材が悪すぎます。残念な作品でした。